2011 Fiscal Year Research-status Report
イムノコンピテントマウスを用いたC型肝炎ウイルス感染評価系の開発
Project/Area Number |
23659039
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
近藤 昌夫 大阪大学, 薬学研究科(研究院), 准教授 (50309697)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
Keywords | C型肝炎 / アデノウイルス / RNA pol I系 |
Research Abstract |
現在、我が国には200万人のC型肝炎ウイルス(HCV)感染者がおり、依然として年間3万人がC型肝炎により死亡している。HCVが感染するモデル動物がチンパンジーのみであることが、C型肝炎治療薬創製を困難なものにしている。本研究では、国内外で開発が進められているHCV感染受容体トランスジェニックマウスと独自の長鎖RNA導入ベクター系を有効活用することで、汎用性および利便性に優れたイムノコンピテントマウスを用いたHCV感染評価系を開発することを目的として研究をスタートした。 遺伝子導入効率に優れ、臨床使用実績のあるアデノウイルス(Ad)ベクターに着目し、テトラサイクリン依存的に発現制御可能なRNA pol I発現Adベクターを作製、当該システムを用いることでHCVゲノム発現Adベクター作製が可能になることを見出し、当該システムの最適化を図った。次に、本発現制御型長鎖RNA発現システムのin vivo遺伝子導入活性を解析したものの、in vivoにおける発現は観察されなかった。そこで、in vivo導入ベクター開発に向けて、国際学会において情報収集を行い、helper dependent Adベクター作製系、発現効率に優れたHCV 2a株のcDNAの入手を図った。 また、予備的にヒトiPS細胞由来肝細胞を用いてHCVゲノム複製を解析したところ、分化誘導前のiPS細胞ではHCVゲノム複製は観察されず、iPS由来肝細胞においてHCVゲノム複製が観察された。このことは、iPS細胞からiPS由来肝細胞をsequential解析することで、HCV複製に関与する新たな宿主因子の同定につながることを示唆している。 平成24年度は、上記の成果を有効活用し、HCVゲノム発現ベクターの作製、および既存のベクターを用いてiPS細胞での発現解析を進める予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予備検討の結果を踏まえ、テトラサイクリン制御型RNA pol I系発現ベクターの最適化を図り、in vitroにおいてHCVゲノム複製をモニターできるシステムを構築した(Yoshida et al., NAR, 2011)。本ベクターをマウスに静脈内投与したものの、肝臓におけるHCVゲノム複製は観察されなかった。RNA pol I発現カセットでドライブされるルシフェラーゼ発現系、RNA pol II発現カセットでドライブされるルシフェラーゼ発現系を用いて解析したところ、RNA pol I発現カセットの転写レベルは極めて低く、最大投与量でもベースレベルの10倍程度の値しかなかったことから、RNA pol I発現系の低転写活性を改善する必要があった(改善策については、今後の研究推進方策に記載)。 一方、当該システムがin vitroでは十分機能していることを踏まえ、未だHCV研究への応用が無いヒトiPS細胞を用い、HCV複製解析を試みた。その結果、ヒトiPS細胞ではHCVゲノム複製が起きないこと、iPS由来肝細胞ではHCVゲノム複製が起きることを初めて見出した(Yoshida et al., BBRC, 2011)。この成果は、本HCVゲノム発現系を用いることで多種多様なiPS細胞由来肝細胞を用いたHCV複製解析が可能なことを示唆しており、基礎臨床両面において示唆に富むデータとして注目されている。 以上、in vivo発現ベクターへの展開については進捗遅延が認められたものの、本ベクターシステムはiPS細胞を用いたC型肝炎研究推進の強力なツールになることが示唆された。
|
Strategy for Future Research Activity |
In vivo投与の実験を踏まえ国際学会などで情報収集を図り、HCVはgenotypeによって複製活性が異なること、現在使用している1b型は複製活性が極めて低いこと、2a型は複製活性が極めて高いとの情報を得た。そこで平成23年度中に、2a型のHCVゲノムcDNAを入手した。今後は、当該cDNAを用いたベクター開発を進め、さらに既存のHCVゲノム発現ベクターを有効活用し、各分化段階の細胞を用いたsequential解析を行うことでHCV複製に関与する宿主因子の網羅的解析を実施する予定である。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は以下の内訳で研究費を使用する予定である。物品費:1,270,000円旅費:900,000円人件費・謝金:10,000円その他:8,103円
|