2011 Fiscal Year Research-status Report
カテナン・ロタキサン構造の導入による生理活性分子の活性制御新手法
Project/Area Number |
23659058
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
樋口 恒彦 名古屋市立大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (50173159)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
梅澤 直樹 名古屋市立大学, 薬学研究科(研究院), 准教授 (40347422)
加藤 信樹 名古屋市立大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (50400221)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | カテナン / ロタキサン / プロドラッグ / ケージド化合物 / 超分子 / 創薬手法 / 抗ガン活性化合物 / 大環状化合物 |
Research Abstract |
本研究の目的は、従来ほとんど有効な利用がなされてこなかったカテナン構造、ロタキサン構造を、生理活性化合物に導入し、必要な場所で光や還元などにより除去することによって、生物活性など有用な活性の抑制された状態から、活性な状態に変換することに利用する、新しい概念・戦略を確立することにある。 23年度は、まず基礎的検討として大環状ラクトンと大環状ジスルフィドとの間でのカテナン形成反応を検討した。ジスルフィドは、固形ガン内でのハイポキシア状態で還元されやすいため、固形ガン内で開環して活性状態になることが期待される。大環状ジスルフィドの還元体であるジチオール分子と大環状ラクトンを共存させる条件で、「セシウム効果」が期待できるセシウムイオン存在下に、ジチオール分子の酸素酸化を行った。生成物を解析したが、カテナンと思われる分子は、現在までのところ確認されていない。 次に当研究室ですでに開発したピリミジン 2,4-ジオン構造とオリゴエチレングリコール ジアイオダイドとの反応による大環状化合物形成反応(Bioorg. Med. Chem. 2007, 15, 7108)を利用したカテナン形成反応の検討も行った。これまでの単量体形成に適した反応条件から、カテナン形成に有利になるように、種々反応条件や、形成する環の大きさを変化させながら生成物の分析を行った。その結果、比較的濃度の高い条件において2量体と考えられる質量数を示す生成物を見出した。この2量体がカテナン構造であるかどうかを、質量分析等で詳細に解析を行っている。 さらに、加水分解酵素によりアミド結合が切断されることにより、環状構造が開環体に変換される仕組みを備えたカテナンの合成についても検討を加えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ピリミジン 2,4-ジオン構造とオリゴエチレングリコールジアイオダイドとの反応による大環状化合物形成反応において、条件検討によりカテナンとも見られる2量体が一定の収率で得られた。このことは今後の生理活性制御分子の構築に役立つ結果と考えられる。大環状ジスルフィドによるカテナン形成に関しては、現在のところまだ成功していない。大環状化合物は、スペースフィリングモデルでは、比較的小さな空隙であるため、そこを通してカテナンを形成させるためには、ある程度の熱や、標的となる大環状化合物との相互作用を高める工夫が必要と考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
異なる大環状化合物同士のカテナン形成はほとんど例がないことから、2つの分子の相互作用を高める戦略が必要と考えられる。そのためにお互いの分子間で形成するキレーションなどを形成させるために、いくつかの金属イオンなどを添加して反応させる検討を行う。また、標的分子に対して、大過剰の大環状化合物前駆体を用い、標的分子共存下に閉環反応を行うことにより、効率の良いカテナン形成を図る。 上記が確立してきたところで、実際の生理活性天然物(マクロライド、環状ペプチド、テロメスタチン等)を用いてカテナン形成を行う。 さらに、活性制御が行える環状構造を導入し、活性制御可能なカテナン分子創製を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は、大環状化合物の原料となる試薬や、キレート用金属試薬、実際の大環状生理活性化合物および溶媒類の購入にまず充てる。これが多くを占めると考えられる。 次に、本研究の研究支援研究者の雇用のための謝金に使用する。さらに、得られたカテナン分子のX線構造解析などの共同研究や、成果発表に必要な旅費に使用する。論文校閲の謝金にも使用する。
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