2011 Fiscal Year Research-status Report
新しいカドミウム毒性防御機構としてのMVBソーティングシステム
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23659062
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
永沼 章 東北大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (80155952)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | カドミウム / MVBソーティングシステム / 酵母 / 毒性軽減機構 |
Research Abstract |
本申請者は、酵母を用いてカドミウムに対する細胞の感受性に影響を与える蛋白質を遺伝子レベルで網羅的に検索し、カドミウムの細胞毒性を軽減する因子としてMVBソーティングシステムに関わる複数の蛋白質(Snf7, Vps25およびVps27)を同定した。MVBソーティングシステムは、エンドサイトーシスによって細胞内に取り込まれた膜蛋白質(受容体やトランスポーター)などを"リソソームに運んで分解するか細胞膜に戻して再利用するか"を選別する重要な細胞内機構の一つであり、酵母からヒトまで広く保存されている。MVBソーティングシステムにはSnf7, Vps25およびVps27を含めて少なくとも13種の蛋白質が関わっている。そこで、MVBソーティングシステムとしての総体的な機能がカドミウム毒性に関与するか否かを明らかにするために、残りの10種の蛋白質の欠損がカドミウム毒性に与える影響を検討した。その結果、13種の蛋白質のどれでも1つを欠損させることによって、酵母がカドミウムに対して高い感受性を示すようになることが判明した。この結果は、MVBソーティングシステムの総体的な機能がカドミウム毒性の軽減に関与していることを明確に示している。MVBソーティングシステムの重要な基質の1つとしてエンドサイトーシスによって細胞内に取り込まれた膜蛋白質があることから、エンドサイトーシスに関わる蛋白質であるEnt2およびEnt4とカドミウム毒性との関係を調べたところ、両因子をそれぞれ欠損させても酵母のカドミウム感受性はほとんど変動しないことが明らかとなった。この結果から、MVBソーティングシステムはエンドサイトーシスによって細胞内に取り込まれた膜蛋白質ではなく、細胞内蛋白質を基質としてカドミウム毒性に対して防御的に機能していると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
東日本大震災によって4月~6月は物理的に研究を実施することができず、また長期停電によって多くの細胞および試料を失ったためそれらを作り直す作業に時間がかかった。そのため研究は「やや遅れ気味」ではあるが、MVBソーティングシステムの総体的な機能がカドミウム毒性の軽減に関与していることを明らかにすることができたので、本年度の最低限の目的は達成できたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
MVBへの蛋白質の輸送システムとしてエンドサイトーシスが関与しないという興味深い知見も得ることができたので、今後は、その他の経路についても検討し、カドミウム毒性に関わるMVBへの蛋白質輸送経路を特定する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度研究費(直接経費1,400,000円)は物品費(一般試薬、一般器具、遺伝子解析用試薬、細胞培養用器具、各種キット)、人件費・謝金(外国語論文の校閲)、旅費(成果発表旅費)、その他(研究成果投稿料)に使用する予定である。
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