2011 Fiscal Year Research-status Report
化学物質過敏症を呈する親電子物質に対する感知・応答の防御システムの探索
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23659063
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
熊谷 嘉人 筑波大学, 医学医療系, 教授 (00250100)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
新開 泰弘 筑波大学, 医学医療系, 助教 (10454240)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 化学物質過敏症 / 3,4-ジヒドロクマリン / アミノ基 / 共有結合 |
Research Abstract |
生活環境中に存在する化学物質の一部は親電子性を有しており、タンパク質中に存在する解離性チオール基あるいは解離性アミノ基と共有結合を形成する。本研究では、3,4-ジヒドロクマリンを解離性アミノ基にのみ結合する環境中親電子物質のモデルとし、化学物質過敏症を呈する化学物質に対して生体が備えた感知・応答の防御システムを明らかにすることを目的としている。本年度は水溶液中における3,4-ジヒドロクマリンの反応性を検討し、3,4-ジヒドロクマリン-タンパク質結合体を特異的に認識する抗体の作製を試みた。緩衝液中において3,4-ジヒドロクマリンは時間依存的に分解され、3-(2-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸に変換された。この水解反応はpH7.5の生理的条件下で緩やかに生じ、pH10の塩基性条件下で速やかに進行した。3,4-ジヒドロクマリンを緩衝液中でリジンおよびヒスチジンと反応させてLC-MS/MS解析を行ったところ、3-(2-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸の産生量は減少し、当該アミノ酸と3,4-ジヒドロクマリンとの結合体のマスナンバーおよびそのフラグメントピークを示す新たなピークが現れた。次に、3,4-ジヒドロクマリンをハプテンとした抗原を作製するために、キャリアー蛋白質としてKeyhole limpet hemocyanin(KLH)を用いた。3,4-ジヒドロクマリンとKLHを反応後、KLHのアミノ基の量を2,4,6-トリニトロベンゼンスルホン酸を用いて測定したところ、有意なアミノ基量の減少が観察された。同条件下でKLHをトリプシン消化し、LC-MS/MSにて修飾部位の同定を行った結果、3,4-ジヒドロクマリンはKLH中のリジン残基のみを修飾していた。現在、3,4-ジヒドロクマリン-タンパク質結合体を特異的に認識する抗体を作製するため、当該抗原をウサギに感作中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度中に3,4-ジヒドロクマリン-タンパク質結合体を特異的に認識する抗体は得ることができなかったが、3,4-ジヒドロクマリンの反応性に関する重要な基礎的知見を得ることができたため、研究はおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
抗原を感作させたウサギの抗血清を用いて抗体の力価をELISAによって分析する。その後、得られた3,4-ジヒドロクマリンを認識する抗体を精製し、その反応特異性を検討する。3,4-ジヒドロクマリンをヒト表皮由来HaCaT細胞に曝露後、3,4-ジヒドロクマリン抗体を用いて細胞内における結合タンパク質を二次元電気泳動とLC-MSにより同定する。更に、同定されたタンパク質と相互作用し、3,4-ジヒドロクマリンの曝露によって活性化される転写因子を免疫沈降法とLC-MSにより探索する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費の使用計画としては、細胞培養、ウエスタンブロット、二次元電気泳動、およびLC-MS解析等を行う際に必要となる生化学試薬の購入に大部分をあてる。それ以外には、研究成果を発表するための旅費や、英文校閲料・論文投稿料に使用する予定である。
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Research Products
(4 results)