2011 Fiscal Year Research-status Report
植物工場での抗体医薬生産に適したレタスによる分泌型IgA植物抗体の発現
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23659067
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
今井 康之 静岡県立大学, 薬学部, 教授 (80160034)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
黒羽子 孝太 静岡県立大学, 薬学部, 助教 (90333525)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 粘膜免疫 / 抗体医薬 / 免疫グロブリンA / 植物発現系 |
Research Abstract |
抗体医薬の生産における問題点(高コスト、生産設備の柔軟性の不足)を克服する方策として、葉野菜を用いた抗体の生産をめざしている。粘膜表面への適用(病原体やアレルゲンの侵入阻止)を目的とし、抗原特異的な分泌型IgA抗体遺伝子をリーフレタスに発現させ、可食性植物抗体の作製をめざす。腸管出血性大腸菌由来のベロ毒素に対する高い結合親和性を有するIgGモノクローナル抗体の可変部を利用し、IgAモノクローナル抗体の定常部を連結させたハイブリッドIgAのH鎖のcDNAを作製している。植物由来のプロモータを利用し、ハイブリッドIgAのH鎖、IgGモノクローナル抗体由来のL鎖、IgA由来のJ鎖cDNAを一度に導入できるバイナリーベクターの構築を進めた。また、分泌片cDNAをバイナリーベクターに別途組み込んだ。H鎖、L鎖、J鎖の3者を発現するように、アグロバクテリウム法にてモデル植物シロイヌナズナに抗体遺伝子を導入した。抗原特異的なハイブリッドIgA抗体のシロイヌナズナでの発現をmRNAレベルおよびタンパク質レベルで確認した。さらに、同じバイナリーベクターを、アグロバクテリウム法にてリーフレタスの子葉に導入を試みた。カナマイシンによる薬剤選択および植物ホルモンによる誘導によってカルスを得た。さらに、シュートの形成および発根を行った。カナマイシン耐性を示し遺伝子が導入されたと想定されるリーフレタスの選抜に成功し、植物体への育成の前段階である根を有する個体にまで育てることができた。 一方、応用として、インフルエンザウイルスのヘマグルチニンに対するIgG抗体の可変部をIgA抗体の定常部に連結したハイブリッドIgAのH鎖遺伝子を作製した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
リーフレタスは、モデル植物シロイヌナズナとは異なりゲノムが未解明であるのと、遺伝子導入の方法がシロイヌナズナと比べて難易度が高い点に課題がある。まず、作製したハイブリッドIgA遺伝子をモデル植物シロイヌナズナで発現させ、2量体IgAが植物体内で作られ、タンパク質として組み立てられていること、およびベロ毒素特異的なIgA抗体が出来ていることを見出した。次に、実際にリーフレタスに遺伝子導入を試み、カルスを経て根を有する個体の生育に成功した。また、応用として行っているインフルエンザウイルスヘマグルチニンに対するハイブリッドIgAの作製は順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
リーフレタスおよびシロイヌナズナで発現させた植物抗体について、並行して抗体の機能を調べる。リーフレタスについては、根を有する個体を土に植えて植物体に生育させる。リーフレタスについては、植物体への抗体遺伝子の導入、抗体mRNAの発現、抗体タンパク質の発現、2量体の形成の確認、抗原への結合活性を順次調べる。シロイヌナズナについては、すでに作製した組換え体についてこれらの検討は終了している。次に、抗体の生物活性を測定する。ベロ毒素のホロトキシンが示すVero細胞やバーキットリンパ腫細胞におよぼす細胞障害活性を植物抗体が中和するかどうかを、動物細胞にて発現させたハイブリッドIgA抗体と比較しつつ評価する。さらに、ベロ毒素の毒性発現機構として、標的細胞へのアポトーシス誘導が植物抗体によって阻害されるかどうかを評価する。さらに、分泌片を発現するリーフレタスの作製を行う。 インフルエンザウイルスHAに対するハイブリッドIgAについては、動物細胞での発現を試み、ウイルスに対する中和活性を中心に抗体の生物活性の評価をすすめる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年3月29-31の日本薬学会第132年会の出張旅費(今井康之および帯同学生1名:合計108,120円)は、4月の支払いとなる。残りの151,452円は、平成24年度分の物品費として使用を計画している。
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