2011 Fiscal Year Research-status Report
薬毒物による三種の生理的ガス状物質産生の相互調節に関する研究
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23659068
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
吉田 武美 昭和大学, 薬学部, 名誉教授 (90006354)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 佐知子 昭和大学, 薬学部, 講師 (00197419)
芦野 隆 昭和大学, 薬学部, 助教 (00338534)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | ガス状物質 / 一酸化炭素 / 硫化水素 / 肝傷害 / 血管平滑筋細胞 |
Research Abstract |
生理的に産生されるガス状物質として、一酸化窒素(NO)、一酸化炭素(CO)および硫化水素(H2S)が明らかとなっており、それぞれ心血管系、肝臓機能、炎症反応等の調節において重要な機能を有していることが期待できる。平成23年度は、薬毒物誘発肝傷害におけるCO産生酵素ヘムオキシゲナーゼ-1(HO-1)の役割および血管平滑筋細胞(VSMC)における薬毒物によるHO-1とH2S産生酵素シスタチオニンγリアーゼ(CSE)、シスタチオニンβ合成酵素(CBS)の発現変動の2点を中心に検討を行った。1.薬毒物誘発肝傷害におけるHO-1の役割 マウスへの乱用薬物コカイン(75 mg/kg)処置により、肝中心静脈周囲の壊死と、同時に肝壊死領域周囲におけるHO-1の誘導が認められた。そこで、HO-1誘導作用を持つ金製剤オーラノフィンを前処置したところ、コカイン処置による血清ALTとAST活性上昇が用量依存的に有意に抑制された。以上より、HO-1は薬毒物による肝傷害に対して防御的に作用することが明らかになった。2.血管平滑筋細胞におけるHO-1、CSE、CBSの発現変動 血管組織を構成するVSMCを用いてガス状物質の発現変動を検討したところ、生体内で酸化ストレスを引き起こす50μM Butyl-hydroxyanisole処理により、2時後から16時間後までHO-1 mRNAが有意に増加し、並行してCSE、CBSも時間依存的な増加が見られた。しかしながら、CBS遺伝子発現は、CSEと比較すると非常に低レベルであった。また、抗炎症作用を示す生体内物質15d-Prostaglandin J2を処理したところ、2.5μMから10μMまで濃度依存的なHO-1 mRNAとCSE mRNAの増加が見られた。以上のことから、VSMCにおいてHO-およびCSEが誘導されることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の研究において、薬毒物によって誘発される肝傷害部位を取り囲むようにHO-1が肝細胞で高発現することを見出した。さらに、HO-1誘導作用を持つ金製剤オーラノフィンを前処置することで肝傷害が抑制された。以上のことからCOの肝傷害に対する防御機能の一端を掴むことができた。また、VSMCにおいては、抗炎症作用が明らかとなっている15d-Prostaglandin J2によりHO-1とCSEが誘導されることを見出した。これらの事実は、15d-Prostaglandin J2の抗炎症作用機序の一つにCOやH2S産生を介している可能性が示唆された。これらの発見は、今後のガス状物質の機能における研究の発展性に期待を見出せたと考えられる。一方、初年度の実験を計画したマクロファージにおける各種ガス状物質合成酵素の発現変動の相互関連は明らかに出来ておらず、免疫系の関与についての解析は若干の遅れが認められるものの、おおむね順調に研究は進んでいるものと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度の研究において、血管組織を構成するVSMCにおいて、同時並行的なHO-1とCSEの発現変動が確認できた。この結果から、血管組織においてCOとH2Sが機能的に作用している可能性が示唆された。そこで、今後はVSMCの遊走や増殖に関与する血小板由来増殖因子による各種ガス状物質の発現変動や機能について検討する。また、薬毒物誘発肝傷害に対して、HO-1が防御的に機能する事実を掴むことができたが、肝臓におけるH2S合成酵素の発現変動と機能については明らかとしていないので今後の課題とする。さらに、検討が遅れているHO-1、CSE、iNOSの3種のガス状物質合成酵素の発現が確認されているマクロファージにおける各ガス状物質間の相互作用と免疫機能調節への役割についても行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
遺伝子改変マウスの繁殖維持費および野生型マウス購入費、遺伝子発現を測定するためのリアルタイムPCR用試薬、タンパク質発現を測定するための抗体や各種生化学用実験試薬類の消耗品購入に研究費を当てる予定である。
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Research Products
(15 results)