2011 Fiscal Year Research-status Report
高病原性トリインフルエンザウイルス新規侵入経路の解明:高病原性の新解釈
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23659069
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Organization for Medical Research |
Principal Investigator |
櫻井 陽 (財)東京都医学総合研究所, ゲノム医科学分野, 研究員 (40546628)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 高病原性トリインフルエンザウイルス / 病原性 |
Research Abstract |
2009年に発生した、ブタ由来新型インフルエンザウイルスの世界的大流行(パンデミック)は世界を大きな混乱に陥れた。幸運なことに、このパンデミックウイルスは比較的低病原性であったため、被害はあまり大きなものにはならなかった。しかし、2003年以降に世界中のトリの間で拡散しつづけている高病原性トリインフルエンザウイルスH5N1亜型の恐怖が取り払われたわけではない。それどころか、H5N1亜型がパンデミックを引き起こすことの現実性が再認識された。高病原性トリインフルエンザウイルスH5N1亜型は、その高い致死率を始めとして他の亜型とは大きく性質が異なっている。これまでの研究で、通常のシアル酸依存的な侵入経路に加えて、H5亜型特異的なアミノ酸配列により、新規の侵入経路を示唆する所見、およびこの配列の変異により培養細胞での侵入能正常化の知見を得た。本研究では、これらの所見をもとに、このアミノ酸配列に関してH5N1亜型特異的な新規侵入経路を解明するとともに、そのアミノ酸配列特異的な中和抗体作製を目指す。本研究では以下の項目を研究課題として予定している。1.新規侵入経路に必須なウイルス遺伝子領域の確定および宿主側の機能の検証2.H5N1亜型の増殖に新規侵入経路が占める役割の大きさの検証3.病原性と新規侵入経路の関連の検証および新規侵入経路を標的とした治療法の検討本研究は高病原性への新たなアプローチとして、ウイルス学的にも医学的にも非常に重要な意義を持っている。また新規の治療法への標的部位としてもその意味合いは非常に大きい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の該当年度の計画は、1)新規侵入経路に関与するウイルス遺伝子領域、アミノ酸配列の特定 2)その領域がどのようなメカニズムで細胞に侵入に関与するかの検証 3)その領域を抗体等で阻害することでウイルス増殖に与える影響の評価、の3項目である。遺伝子領域、アミノ酸配列の特定に関しては既にその領域の同定に成功した。この領域は精製タンパクレベルでもその機能が維持されているアミノ酸領域であり、ウイルスレベルでの実験を含め検討が終了している。またその領域の配列から既知の非ウイルスタイプの細胞侵入経路との相同性を確認し、その経路と非常に類似した侵入パターンであることを確認した。一方で、うH5N1由来配列に特異的なパターンも発見しており、今後の発展が期待される。領域阻害による影響はラビットのポリクローナル抗体による実験により阻害の確認ができた。マウスのモノクローナル抗体はこの領域のマウスのエピトープとしての相性の問題のためか、数度にわたる挑戦にもかかわらず得られることがなかった。そのため、ラビットでのモノクローナル抗体の作製に転じ、すでに抗体を得た。この抗体の機能に関しては今後の研究により検討される。 以上のことから、本研究はおもむね順調に進行しており、今後の展開が期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の方針としては計画通り、動物実験を主体とした実験へと展開する。動物実験による特定した領域の阻害による病原性への影響の評価を行うが、平成23年度の研究結果からこの領域が精製タンパクレベルでも機能しうることが確認されたことを踏まえ、精製タンパクをマウスに注射する実験を加える。これらの実験により、該当領域が生体内でどれだけ重要な意味合いを示すかを明確に判断できる。精製タンパクを用いた実験は臓器への拡散状況を確認し、ウイルスを用いた実験はそれに加えて体重変化と生存率を検討する。これらが抗体によって影響をどのように受けるかを検討し、新規感染経路のもたらす役割を検証する。 さらに治療法として展開可能かどうかの検討に移る。治療法としての検討は感染後に行う必要があるという点が大きく異なる。前年の実験で成績の良かった抗体を用い、感染後1日目、3日目にそれぞれ抗体を尾静脈注射する。その結果生存率に有意な影響を与えることができれば治療法として成立する可能性があると評価する。この実験は挑戦的ではあるか、成功時の意味合いは非常に大きい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究は初年度の研究が比較的順調に展開し、想定されたトラブルがほぼ回避できたため、予定よりも少ない研究費で進行が可能であった。一方で、想定に入っていなかった興味深い所見(精製タンパクでも侵入能が確認できた)が得られ、このタンパクを用いた検討が加わり来年度の実験では予定よりも研究費が必要となった。加えて、ラビットのモノクローナル抗体という新規のツールを使用する必要性が出てきたため、この抗体の大量精製等に必要なサプリメント類に前年度余裕のできた分の研究費を充填する予定である。 動物実験には当初の計画通りの研究費が使用され、動物の購入代・餌代・管理費等に使用される。またBSL3実験施設内の研究に用いられるディスポーザブルな実験器具・実験衣等は前年度と同様に計画通りに使用される。
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[Journal Article] Rapid typing of influenza viruses using super high-speed quantitative real-time PCR2011
Author(s)
Sakurai A, Nomura N, Nanba R, Sinkai T, Iwaki T, Obayashi T, Hashimoto K, Hasegawa M, Sakoda Y, Naito A, Morizane Y, Hosaka M, Tsuboi K, Kida H, Kai A, Shibasaki F
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Journal Title
J Virol Methods
Volume: Dec;178(1-2)
Pages: 75-81
Peer Reviewed