2011 Fiscal Year Research-status Report
SmgGDSを介したスタチンの多面的作用の分子機序の解明
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23659071
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
下川 宏明 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (00235681)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | シグナル伝達 / スタチン / 低分子量G蛋白 |
Research Abstract |
コレステロール低下薬スタチンには、コレステロール低下作用によらない「多面的作用」があることが知られているが、その分子機構の詳細は、まだ明らかではない。我々は、この点について培養細胞レベルからヒトに及ぶ検討を行い、以下のような新知見を得ている。(1)スタチンは、脂溶性・水溶性に関わらず、血管内皮細胞でSmg-GDSの発現を用量依存的・時間依存的に亢進させる。2)この作用は、GSK-3bやAKt/PI3Kの阻害薬で抑制されるが、メバロン酸代謝経路の抑制では全く影響を受けない。(3)スタチンにより発現が亢進したSmg-GDSは、低分子量Gタンパクの一つであるRacと複合体を形成し核内へ移行し、そこでproteasomeによりRacが分解される。(4)一方、SmgGDSは、もう一つの低分子量GタンパクであるRhoとは結合せず、Rhoは核内には移行せず、細胞質内に留まる。(5)Smg-GDS欠損マウスでは、正常マウスでは認められるアンジオテンシンIIによる心血管肥大作用に対するスタチンの抑制効果が欠落している(6)正常健常人において、アトルバスタチンやプラバスタチンの投与(2週間)は、末梢血白血球中のSmgGDS活性を有意に増加させ、興味あることに、その増加は、酸化ストレスマーカーの低下とは相関したが、LDL-コレステロールの低下とは相関しなかった。以上のように、スタチンの有する多面的作用の本質的な分子機構に、SmgGDSが重要な役割を果たしていることが明らかになりつつある。本研究を通して、SmgGDSに関する新しい創薬やスタチンの副作用軽減につながる新技術の開発につながることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究は、ほぼ予定通りに進行しており、平成24年度のあと1年間の研究の継続で、所定の目的が達成できる見込みである。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度にあたる平成24年度は、以下の研究を行う。(1)スタチンによりSmg-GDSの発現が亢進する分子機構を明らかにする、(2)内皮細胞に見られるスタチンのSmg-GDS発現亢進作用が、他の臓器・細胞にも認められるか検討する、(3)正常健常人において、スタチン(水溶性・脂溶性)服用によりSmg-GDS発現が亢進するか否か、検討する。上記の検討により、スタチンの多面的作用におけるSmg-GDS発現亢進作用の詳細な分子機構と臨床的意義が明らかになることが期待される。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
主として、動物購入費・飼育費、薬品等の消耗品費の購入に充てる。
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