2012 Fiscal Year Annual Research Report
センス・アンチセンスRNA複合体を標的とした新規核酸医薬療法の開発
Project/Area Number |
23659080
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
櫻井 文教 大阪大学, 薬学研究科(研究院), 准教授 (70370939)
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Keywords | 非コードRNA / 核酸医薬 / 遺伝子発現制御 / がん / 非翻訳領域 / RNA activation |
Research Abstract |
標的遺伝子のプロモーター領域に相同な配列を有する二本鎖RNAを導入することにより、標的遺伝子の発現を活性化させるRNA activationは治療への応用が期待されている。RNA activationでは、プロモーター領域から転写される非コードRNAが標的と考えられている。本研究では、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)を阻害することで癌の転移や血管新生を阻害するRECKの発現をRNA activationにより活性化することを試みた。MDA-MB-231細胞にRECK遺伝子のプロモーター領域に相同な配列を有する二本鎖RNAを導入したところ、ある配列でRECKの発現が有意に上昇した。さらにRECK遺伝子の活性化は、他の癌細胞においても観察された。またRECK遺伝子の活性化は導入する二本鎖RNAの配列依存的であること、細胞内導入4日後にピークを迎えたのち、約1週間持続すること、二本鎖RNAの濃度依存的に活性化することが明らかとなった。そこで次にRECK遺伝子のプロモーター領域よりアンチセンス転写物が発現しているかどうか検討したが、アンチセンス転写物は検出されなかった。この結果より、RECK遺伝子に関してはこれまでに報告されているメカニズムとは異なる機構により活性化されていることが示唆された。次に、RNA activationによるRECK遺伝子の発現活性化により、MMPの発現抑制ならびに癌細胞の侵潤抑制が誘導されるか検討した。その結果、MMP-9ならびにMMP-2の発現および活性が有意に抑制されていた。さらにInvasion assayにより癌細胞の侵潤を検討したところ、RECK遺伝子の活性化により癌細胞の侵潤が約1/5に抑制された。本結果より、RNA activationによるRECK遺伝子の活性化は、癌の転移抑制に向けて有用であることが示唆された。
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