2012 Fiscal Year Research-status Report
有機化学のエビデンスに基づく医薬品投与時の配合変化の予測
Project/Area Number |
23659087
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
板垣 文雄 帝京大学, 薬学部, 准教授 (70563906)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
忍足 鉄太 帝京大学, 薬学部, 准教授 (00279043)
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Keywords | 配合変化 / 注射薬 / 有機化学のエビデンス / メロペネム / アミノ酸輸液製剤 / 配合変化予測 |
Research Abstract |
複数の注射薬・輸液を混合して用いるとき、白濁、沈殿などの配合変化はしばしば治療上で大きな問題となる。しかし、配合変化を有機化学反応であると捉えて検討された事例はほとんどない。本研究では、臨床現場で生じる医薬品の配合変化について、有機化学反応の視点から解明することを試みている。得られる知見より、有機化学のエビデンスに基づく新しい配合変化の予測の方法論を確立して、治療上問題となる医薬品の分解による効果減弱や新たに生じる反応生成物による健康被害を未然に防ぐことを目指している。 1.β-ラクタム環とスルファニル基(SH基)の化学反応による配合変化;カルバペネム系抗生物質である注射用メロペネムとアミノ酸輸液製剤を混合すると、メロペネムの力価が短時間に著しく減弱する配合変化が知られている。有機化学反応の視点からその原因を検討した結果、アミノ酸輸液製剤に含まれるL-システインがメロペネムのβ-ラクタム環へ求核反応することが、配合変化の原因と特定できた。また、反応速度論を利用して、注射用メロペネムとアミノ酸輸液製剤の配合変化の予測式を導くことに成功した。さらに、その成果を他の医薬品に応用し、メロペネム水和物と同様にβ-ラクタム環をもつ抗生物質、およびL-システインと同様にスルファニル基(SH基)を有する医薬品についても、配合変化の検討を行った結果、化学構造の違いによる配合変化の差異を明らかにした。 2.培養細胞を用いた配合変化による生成物の毒性評価;配合変化による生成物の毒性を評価するために、培養細胞を用いて細胞死および細胞の形態学的変化を指標とした評価系の構築を試みている。また、薬理活性の指標として抗酸化作用等についても評価系の作成を試みている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
注射薬混合時の化学反応による配合変化予測に関しては、(1)注射用メロペネムとアミノ酸輸液製剤の配合変化予測、(2)類似する化学骨格および官能基を有する医薬品による配合変化の検討、の2つを中心にすすめた。注射用メロペネムとアミノ酸輸液製剤の配合変化予測と検証に関しては、現在、研究結果をとりまとめて論文を投稿中である。また、この配合変化による反応成績体の単離と機器分析による構造解析、そして反応機序の解明に関しては投稿論文を準備中である。類似する化学骨格および官能基を有する医薬品による配合変化の検討に関しては、β-ラクタム環をもつ抗生物質(カルバペネム系、ペニシリン系、セフェム系)とL-システインの配合変化、およびスルファニル基(SH基)を有する医薬品(グルタチオン、メスナ、チアマゾール)と注射用メロペネムの配合変化、について研究成果を学会で公表している。 他の化学反応機序による配合変化に関する検討がやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
以下の2つを中心に研究をすすめる。 1.注射薬混合時の化学反応による配合変化予測、経口薬混合時の化学反応の予測、および経口薬の胃内における化学反応の予測;ハイリスク薬(抗悪性腫瘍剤、不整脈用剤、抗てんかん剤、血液凝固阻止剤、ジギタリス製剤、テオフィリン製剤、抗てんかん剤、血液凝固阻止剤、ジギタリス製剤、テオフィリン製剤、精神神経用剤、糖尿病用剤、免疫抑制剤など)を対象に、有機化学反応のエビデンスから配合変化を予測し、その評価を行う。 2.培養細胞を用いた配合変化による生成物の毒性評価;本項目は、新たに追加して推進する項目である。配合変化による生成物の毒性や薬理活性については、ほとんど検討された事例はない。本年度は、配合変化による生成物の毒性を評価するために、培養細胞を用いて細胞死および細胞の形態学的変化を指標とした評価系の構築をすすめる。初期検討の段階では、注射薬の配合変化による生成物において、親化合物ではみられなかった新たな薬理活性が見出されている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年4月に大学棟の新築にともない研究室の移転があったため、平成23年度~平成24年度の研究の達成がやや遅れており、その結果、研究費の使用もやや遅れている。 次年度の研究費は、培養細胞を用いた毒性評価用の機器として全自動セルカウンターを購入したい。また、研究費を消耗品(医薬品・試薬購入費、研究論文別刷)、翻訳校閲、英文校正、ガラス器具などの消耗品に使用する予定である。
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