2013 Fiscal Year Annual Research Report
有機化学のエビデンスに基づく医薬品投与時の配合変化の予測
Project/Area Number |
23659087
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
板垣 文雄 帝京大学, 薬学部, 准教授 (70563906)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
忍足 鉄太 帝京大学, 薬学部, 准教授 (00279043)
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Keywords | 配合変化 / 注射薬 / 有機化学のエビデンス / メロペネム / カルバペネム / アミノ酸輸液製剤 / 細胞障害性 |
Research Abstract |
複数の注射薬・輸液を混合して用いるとき、白濁、沈殿などの配合変化はしばしば治療上で大きな問題となる。本研究では、有機化学反応の視点から配合変化を解明し、治療上問題となる医薬品の分解による効果減弱や新たに生じる反応生成物による健康被害を未然に防ぐことを目指している。また、補助事業期間中の新たな展開として配合変化による生成物に関して培養細胞を用いた毒性の評価を試みた。 1.β-ラクタム環とスルファニル基(SH基)の化学反応による配合変化 カルバペネム系抗生物質である注射用メロペネムとアミノ酸輸液製剤を混合すると、メロペネムの力価が短時間に著しく減弱する配合変化が知られている。有機化学反応の視点からその原因を検討した結果、アミノ酸輸液製剤に含まれるL-システインのSH基がメロペネムのβ-ラクタム環へ求核反応することが、配合変化の原因と特定できた。また、反応速度論を利用して、注射用メロペネムとアミノ酸輸液製剤の配合変化の予測式を導くことに成功した。さらに、その成果を他の医薬品に応用し、化学構造の違いによる配合変化の差異を明らかにした。 2.培養細胞を用いた配合変化による生成物の毒性評価の試み 配合変化による生成物の毒性を評価するために、培養細胞を用いて細胞生存率を指標とした評価系の構築をすすめた。カルバペネム系抗生物質とL-システインの配合変化生成物における細胞生存率への影響について、マウスリンパ腫由来EL4細胞を用いて検討した結果、配合変化生成物は、コントロールと比較して細胞生存率を低下させることが判明した。また、配合変化生成物が活性酸素を発生させることを見出した。これらの結果は、配合変化は効果の減弱のみならず、生体内の活性酸素の発生や有害反応に寄与する可能性を意味する。
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