2012 Fiscal Year Annual Research Report
異常骨髄幹細胞を標的にしたイマチニブによる糖尿病合併症の治療戦略
Project/Area Number |
23659098
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
藤宮 峯子 札幌医科大学, 医学部, 教授 (10199359)
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Keywords | 糖尿病合併症 / 肝臓 / 腎臓 / グリーベック / イマチニブ / 骨髄由来細胞 |
Research Abstract |
イマチニブ(グリーベック)は、Bcr-Ablチロシンキナーゼ阻害剤で慢性骨髄性白血病(CML)の治療薬である。イマチニブは、CML細胞のケモカイン受容体(CXCR4)を活性化し、CML細胞を骨髄に留めるという作用があり、この作用から糖尿病合併症の治療に使えるという着想をもった。これまで研究代表者は、糖尿病の病態において、異常な骨髄由来細胞が末梢臓器に浸潤し、相手の細胞と細胞融合することで臓器障害を起こすことを報告してきた。イマチニブで異常な骨髄細胞の末梢臓器への浸潤を抑制できれば、糖尿病で起こる臓器障害を治癒に導くことができる。 モデル動物として、STZ投与後12週の1型糖尿病マウスおよび高脂肪食(HFD)摂取7ヶ月の2型糖尿病マウスモデルを用い、イマチニブ(50 mg/kg/day)を2週間連続で経口投与した群とvehicle群を作成した。骨髄由来細胞の動態を調べるために、マウスは全てGFPTgマウスから骨髄移植をしたキメラマウスを用いた。肝臓、腎臓の共焦点顕微鏡によるGFP陽性細胞の検出と、TNFα陽性細胞の分布を画像解析で定量的に解析した。さらに、骨髄単核球をFACSで分離し、CXCR4発現をイマチニブ投与群と対照群で比較検討した。 イマチニブ投与で、1型糖尿病モデルと2型糖尿病モデルの両方で、肝臓、腎臓への骨髄由来細胞(GFP陽性細胞)の浸潤が抑制され、TNFα陽性細胞が減少することがわかった。また、骨髄単核球のCXCR4発現が1型と2型糖尿病モデルマウスで低下し、イマチニブ投与で正常レベルに回復した。 以上の結果より、イマチニブは異常な骨髄細胞の末梢臓器への浸潤を防ぎ、肝臓や腎臓のTNFα産生を抑制する効果があることが判明した。本研究で得られた結果は、糖尿病合併症の治療戦略として極めて重要なものである。
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