2011 Fiscal Year Research-status Report
タンパク質をコードしないRNAによる、精巣の幹細胞制御機構の解析
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23659099
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
大保 和之 横浜市立大学, 医学部, 准教授 (70250751)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 生殖細胞 / 幹細胞 / 前駆細胞 / 小分子RNA |
Research Abstract |
タンパクをコードしないnon-coding RNA、特に"micro-RNA"と"核内長鎖non-coding RNA"の2つが、幹細胞の特性と遺伝子発現パターンの決定にどのように関わっているか、幹細胞と前駆細胞の2つの細胞分画に分けて比較解析している。まず平成23年度は、Neurogenin-3 promoter下に蛍光緑色蛋白 GFP を持つトランスジェニックマウス(以下 Ngn3-GFP マウス)を材料に、精巣の mitosis 期の精原細胞を、自己複製能がある幹細胞と、それを喪失し精子形成へ向けて分化をスタートさせた前駆細胞に、セルソーター(蛍光励起細胞分取装置=以下 FACS)を用いて分画化、純化した。このレポーターマウスからは、Kitを発現している前駆細胞については、micro-RNAの次世代シークエンサーを用いた大規模シークエンスに必要な細胞数を回収する事に成功した。同時にpositive control用micro-RNAの同定と決定も行った。具体的には、我々が同定している、Post-transcriptionalに蛋白量が制御されていると考えられるゲノム修飾酵素3種類について、その3’-UTRに結合すると予測されたmicro-RNAの発現を、幹細胞、前駆細胞の各分画で比較し、発現量が著しく変動するものを同定した。次に、集まった前駆細胞において本年度、次世代シークエンサーIllumina において解析を行って解析結果を得た。具体的には、micro-RNAなどが特異的に濃縮されるように、15-35bp のRNAフラクションを選択的に精製し解析に供した。幹細胞分画は、用いたNgn3-GFP マウスでは収量が少ないため、初年度内に解析に必要な細胞数の約半分程度の回収が終了した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前駆細胞分画の解析については、初年度において目標としているところまで到達することができた。特にmicro-RNAについて、既知のmicro-RNA分子で、予備実験において前駆細胞に発現していることが確認された分子が、次世代シークエンサーを用いて得たデーターにおいても再現がとれており、実験系全体として問題なく動いていると考えられる。一方、幹細胞分画については、予想以上に細胞数が集まらなかった。これは、細胞をFACSを用いて分取する際に、必ず集まった細胞の一部を用いてRT-PCR法にて純度の検定を行うため、収量が少ない場合かなりの無駄となる。従って、自己点検による進捗状況は、やや遅れているとした。これに対しては処理するマウスの数を増やすなどして対応している。また、幹細胞分画をより多く回収できる別のGFPレポーターマウスも準備中である。 申請時に予定していなかった研究も追加して行っている。既知の核内長鎖 non-coding RNAが含まれているDNAアレイが、入手、使用可能となった。そこで、幹細胞と前駆細胞に関し、既知の核内長鎖 non-coding RNAのDNAアレイ解析を行い、それぞれの分画に特徴ある発現を示すものが同定された。 代表者は、これまでmiRなどmicro-RNAを実験材料として用いたことが無かったが、初年度の実験で、micro-RNAの純化法や、パイロット実験で同定したmiRの、ターゲットとなるmRNAのレポーターアッセイなど、2年目の実験で必要となる解析法に関して、1年目において方法論的に習熟することが出来た。また、それらに必要な研究材料なども集める事ができた。従って、2年目は1年目より、より効率的に仕事が進められると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目前半で、幹細胞分画についてのmicro-RNAの次世代シークエンサーを用いた解析を終了させる。これにより幹細胞と前駆細胞の2つの分画で差のある発現を示すmicro-RNAを同定することが初めて可能となる。その後は、予定通り以下の研究を行う。 発現が幹細胞と前駆細胞で変化するTop30の個々のものについて、発現の変化が間違いないか再度純化した細胞を集め確認を行う。次にTargetScanを用いて、これらmicro-RNAが結合するターゲットとなるRNAを同定する。次に、実際にターゲットと予測された分子の蛋白の発現、mRNAの発現が、幹細胞と前駆細胞で変化するか確認を行い、絞り込みを進めて行く。方法論としては、qRT-PCR、Wetern blotting法を行う。絞り込みの優先順位は、ゲノム修飾に関わるものを第一とする。絞り込まれた分子については、そのターゲットとなる3'-UTRを結合させたルシフェラーゼレポーター遺伝子を用い、ルシフェラーゼアッセイ法にてルシフェラーゼ活性の変化を調べ、変化をもたらすmicro-RNAを同定する。これらの実験系は初年度に確立済みである。 最後に、同定された特にmicro-RNAについて、長期in vitroで培養可能となったマウス培養精原細胞株(以下GS細胞)を材料に、レンチウイルスを用いて micro-RNA の過剰発現を、また、安定性の高い市販の anti-sense oligo を用いmicro-RNA の機能抑制実験を行なう。結果として予測される変化として、GS細胞の増殖スピード、生存などの変化が挙げられる。また、変化のあったGS細胞を精細管移植することにより、長期の幹細胞維持に対する変化や細胞分化能についても検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
初年度に幹細胞分画の次世代シークエンサー解析を行わなかったので消耗品代が若干余る結果となったが、2年目に行うため消費することとなる。予算のほとんどが、次世代シークエンサーの消耗品代、明らかとなったmicro-RNAの機能アッセイの試薬などを購入する消耗品代となる予定である。
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Research Products
(4 results)
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[Journal Article] HP1g links histone methylation marks to meiotic synapsis in mice2011
Author(s)
Takada Y, Naruse C, Costa Y, Shirakawa T, Tachibana M, Sharif J, Kezuka-Shiotani F, Kakiuchi D, Masumoto H, Shinkai Y, Ohbo K, Peters AH, Turner JM, Asano M, Koseki H.
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Journal Title
Development
Volume: 138
Pages: 4207-4217
DOI
Peer Reviewed
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