2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23659100
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Research Institution | Iwate Medical University |
Principal Investigator |
人見 次郎 岩手医科大学, 医学部, 教授 (00218728)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
磯貝 純夫 岩手医科大学, 医学部, 准教授 (60212966)
木村 英二 岩手医科大学, 医学部, 助教 (50405750)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 発生・分化 / 分子認識 / 発現制御 / 脳血管 / イメージング |
Research Abstract |
特定器官の脈管形成と動静脈の運命決定から、階層性を持ったvascular tree の形成にいたる血管系構築の全過程の詳細は不明であり、その分子機構に関する研究も断片的な事象を対象にしているに過ぎない。本研究では、初期脳血管系の全構築過程のライブイメージングから明らかとなったイベントをたどり、初期脳血管系の特異的な階層化過程の分子機構の解明に挑戦する。 当該年度はゼブラフィッシュの脳血管系の形成過程の詳細を形態学的に明らかにするとともに、特に脈管形成と運命決定に関わる遺伝子の探索を行った。 結果、血管内皮細胞のEGFP発現トランスジェニック・ゼブラフィッシュを用いたタイムラプスイメージングと、動・静脈のマーカー遺伝子によるin situ hybridizationにより、発生初期に頭部に出現する血管芽細胞塊ごとの動脈性と静脈性の形質を明らかにした。さらに得られた結果を視覚的に理解するために、血管芽細胞塊ごとに色分けし、それぞれ血管芽細胞塊からどの血管が派生するかを追跡できるムービーを作成した。その結果、当初、前脳と後脳の腹側に認められたfli陽性細胞塊のうち,後脳の腹側の細胞塊は、眼胞後方の外側の細胞塊と腹側の細胞塊との2つの系統の細胞に分けられることが明らかになった。動脈系(脳底動脈を除く)は吻端の細胞塊から、静脈系は眼胞後方の外側の細胞塊に由来し、眼胞後方の腹側に出現する動脈系の細胞塊からは原始内頸動脈, 鰓弓動脈, 外背側大動脈が発生することを明らかにした。一方、fli陽性細胞が発生する吻側と眼胞後方の正中部では両側性にshhの発現が確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
我々の明らかにした初期脳血管系の形成過程の詳細はこれまので発生学の常識とは異なっており、新たな血管形成の概念を打ち立てる必要性を示したと言える。血管芽細胞塊ごとに色分けし、それぞれ血管芽細胞塊からどの血管が派生するかを追跡できるムービーは、見る者誰もが利用できる参考資料であり、新しい形の血管発生アトラスである。脳だけでなく、血管発生に関わる研究者全てにとって、インパクトのあるものであり、世界にアピールできるツールとなるであろう。 しかし、当初予定していた脳特異的な脈管形成の分子機構と動静脈の運命決定機構の解析では、shhの発現のみ新しい知見であり、十分な成果を得ることが出来なかった。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は脈管形成に関わる既知遺伝子の発現局在を網羅的に解析し、その機能評価を行い、責任遺伝子を探索する。1.脳特異的な脈管形成の分子機構解析:脈管形成に関わる既知遺伝子の発現局在をin situ hybridizationで明らかにする。これにより、脈管形成時の責任遺伝子の探索を行う。すなわち、機能解析をMOもしくはmRNAのインジェクションによる発現制御と、二光子顕微鏡によるライブイメージングにより行い、それらの責任関与を明らかにする。2.動静脈の運命決定機構の解析:脳特異的な脈管形成に関わる2つの領域のGFP陽性細胞塊は、出現時にそれぞれHey2とflt4を発現しており、すでに動静脈の決定がなされている可能性が高い。今回明らかになったshhの発現とその発生と運命決定機構の関係を明らかにする。また、動脈分化はnotchシグナルが重要視されているが、notch感受性誘導機構に脳特異性はあるのか、静脈分化決定機構は何か、この点も解析を行う。3.TGゼブラフィッシュの作製:運命決定機構の解析を目的に、上記解析の結果得られた責任遺伝子候補の発現と脈管形成の関係を評価できるTGゼブラフィッシュの作製に取り掛かる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
解析用試薬130,600円 実験動物30,000円 解剖学会支部会(山形)80,000円 研究補助400,000円 磯貝分担90,000円 木村分担60,000円当該年度は9万円を繰越し、次年度はTGゼブラフィッシュの作製のために、研究補助を雇うこととした。網羅的な遺伝子発現解析のin situ hybridizationや、機能評価のためのインジェクション等実験用の試薬購入、顕微鏡用の試薬や消耗品の購入を考えている。また学会に参加し、解析結果を発表するともに血管発生に関する最新の見地を得たいと考えている。
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