2011 Fiscal Year Research-status Report
ヘパリンプロテオグライカン(セルグライシン)の生合成
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23659108
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
柳下 正樹 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (70132793)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
KA 井上 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (90302877)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | heparin / heparan sulfate / glycosaminoglycan / proteoglycan |
Research Abstract |
ヘパリンの生合成過程において血液抗凝固作用を持つヘパリン糖鎖(グライコサミノグライカン)が生成される過程において、グライコサミノグライカンの特異的分解酵素(ヘパラネース)の作用が必須であることを示すために、第一にヘパラネースタンパク質を遺伝的に欠損したノックアウトマウスモデルを用いて、第二にヘパリンプロテオグライカンを生合成する肥満細胞の初代培養系を確立し、第三におもに放射能代謝標識実験法を用いてヘパリンプロテオグライカンの生合成過程の詳細を解析し、ヘパリンの生成異常を証明する。これが証明されれば、生体内での血液凝固制御過程におけるヘパラネースの重要性を明らかにすることができ、各種の血液凝固異常を示す疾患(これらは重症、あるいは致命的であることが多い)の予防、治療方法が開発されれば医学的な貢献度が大きい。本年度は特に本研究の証明過程の中心となるヘパリンをin vitroで生合成できる肥満細胞の初代培養系の確立を検討した。実験的な問題点としては、十分な数の細胞を獲得すること、細胞の純度(多種細胞の混入を避けること)が十分であること、肥満細胞がヘパリンを合成する代謝状態にあることがとりわけ技術的にクリアーされなければならないことであった。現在までの実験結果では、まだ混入細胞の割合が比較的多いこと、培養時間とともに細胞が脱分化傾向にあること、細胞培養液中のブドウ糖濃度がとくに糖鎖合成に大きな影響を与えることが判明した。また肥満細胞を調製する組織により糖鎖構造がヘパリンではなく、過硫酸化構造をもつコンドロイチン硫酸に転換されるという傾向もみられている。これらの問題点を解決することが次年度の主要な目標となる。ヘパリンの生合成、生物学的作用などを議論するセッションを含む(プロテオグライカンに関する)国際学会に参加し、関連分野の研究者と上記の問題点含む議論を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度行ったヘパリンをin vitroで生合成できる肥満細胞の初代培養系の確立を検討において実験的な問題点として把握された事項は、(1)十分な数の肥満細胞を獲得すること、(2)細胞の純度(多種細胞の混入を避けること)が十分であること、(3)肥満細胞がヘパリンを合成する代謝状態にあることがとりわけ重要であった。現在までの実験結果では、まだ混入細胞の割合が比較的多いこと、培養時間とともに細胞が脱分化傾向にあること、細胞培養液中のブドウ糖濃度がとくに糖鎖合成に大きな影響を与えることが判明してきた。また肥満細胞を調製する組織により糖鎖構造がヘパリンではなく、過硫酸化構造をもつコンドロイチン硫酸に転換されるという傾向もみられている。いずれの項目もヘパリンの生合成、修飾過程を研究するには克服されなければならない問題点であり、これらの問題点を解決することが次年度の主要な目標となる。あるいは別の実験アプローチも必要となる可能性がある(次項目中に記載)。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に把握された実験的な問題点としては、十分な数の細胞を獲得すること、細胞の純度(多種細胞の混入を避けること)が十分であること、肥満細胞がヘパリンを合成する代謝状態にあることがとりわけ技術的にクリアーされなければならないことであった。現在までの実験結果では、まだ混入細胞の割合が比較的多いこと、培養時間とともに細胞が脱分化傾向にあること、細胞培養液中のブドウ糖濃度がとくに糖鎖合成に大きな影響を与えることが判明してきた。また肥満細胞を調製する組織により糖鎖構造がヘパリンではなく、過硫酸化構造をもつコンドロイチン硫酸に転換されるという傾向もみられている。これらの問題点を解決することが次年度の主要な目標となる。あるいは並行実験として、他の研究者らがすでに確立したヘパリン合成細胞系を用いた実験系を用い、ヘパラネース遺伝子のノックダウン実験を行うなどの可能性も考えられるが、これらの系においても実験条件に依存したヘパリン以外の糖鎖合成への転換など、われわれの経験した問題点と共通の問題点もいくつか知られており、ノックダウン実験の理論的完璧性に関して実験結果の解釈に関する問題を生ずる可能性もある。したがってあくまでも当初目指した、実験内容を成功させることを第一の目標としたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
基本的には申請時から大きな変更はない。物品費の内容としてはヘパリンを生合成する細胞培養を確立するための動物、細胞培養試薬、放射性代謝標識実験を行うための、放射性物質、放射能標識されたヘパリンプロテオグライカンの生化学的分析を行うための各種分析試薬、機材などである。また海外で同領域の研究を行っている研究者との技術交流、共同実験なども積極的に行い、研究の効率化も進めたい。
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Research Products
(9 results)