2011 Fiscal Year Research-status Report
生体心におけるカルシウム誘導性ネクローシス様細胞死の転写因子による制御
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23659110
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中山 博之 大阪大学, 薬学研究科(研究院), 准教授 (40581062)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 細胞死 / 心不全 |
Research Abstract |
生体心においてL型カルシウムチャネルを介するCa2+流入増大モデルにβアドレナリン受容体刺激を加えるとカルシウム塩の沈着を伴うユニークな組織像をとる非アポトーシス性細胞死(以下von Kossa染色陽性細胞死)が観察される。このような細胞死像を呈する心臓において骨形成主要転写因子であるRunx2の発現上昇が認められる。本研究において、かかるvon Kossa染色陽性像を呈する細胞死が転写因子Runx2により制御されているという仮説を検証した。まずRunx2心筋過剰発現マウスを作成し、解析を試みた。2ラインの過剰発現マウスが得られ、高発現のラインにおいて心肥大と心機能の低下及び早期の死亡率の増加が認められた。しかしながら、組織学的な解析においてはvon Kossa染色陽性の細胞死像は認められなかった。次に圧負荷モデルを用いてストレスによる心病型とvon Kossa陽性細胞死像の有無を観察した。この検討には、生理学的条件下では異常を認めなかった低発現ラインを使用した。その結果、圧負荷により過剰発現マウスは心機能低下をきたし、また一部のマウスにおいてvon Kossa陽性細胞死像が観察された。この結果は、von Kossa染色陽性像を呈する細胞死形成の機序にRunx2が関与している事を示唆していると考えられる。さらに、心不全の病態形成におけるRunx2の役割を検討するために、Runx2の臓器特異的なノックアウトマウスを作製した。今後同マウスの解析により、心筋におけるRunx2の意義を明らかにしていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画1-1に従い、Responder TGとtTAの交配による蛋白質発現の確認と実験に使用する至適ラインの決定、テトラサイクリンによるtransgeneの発現抑制の確認、生理条件下におけるvon Kossa染色を含む病理組織学的解析、持続イソプロテレノール刺激によるvon Kossa染色陽性細胞死誘導の同定及び心筋の骨様変化(osteogenic conversion)の骨形成関連遺伝子の発現解析による評価を完了した。さらに研究計画に加えて、圧負荷における病態解析・マイクロアレイによる解析・テレメトリーによる心電図解析を施行した。研究計画1-2.に従いラット新生児心筋細胞を用いてアデノウィルスによるRunx2過剰発現下におけるβ受容体刺激誘導性細胞死を評価した。また各種阻害剤を用いてアポトーシスの有無を確認した。さらにRunx2の非リン酸化変異体を作成し細胞死の転写活性化依存性を検討した。また研究計画2に従い、Runx2 floxマウスの作成を施行し、キメラマウスの作製が完了し、遺伝子の世代間伝達も確認された。以上より計画により多少の予定外の進展・遅延している部分があるものの概ね計画どおりと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は心筋特異的Runx2欠損マウスの解析を中心に展開する。以下各々の研究計画を述べる。研究計画1. Runx2過剰発現による心病態形成機序をマイクロアレイ解析にて得られた知見をもとに、その下流の候補分子であるオステオポンチンに焦点をあてて解析していく。研究計画2. 心筋特異的Cre recombinase発現マウスとの交配による心筋特異的Runx2欠損マウスの作成。Runx2floxマウスにおいて心筋特異的Runx2欠失を確認するためのマウスの交配を行う。生理条件下における表現型解析を、心エコーを用いた心機能の解析及びvon Kossa染色等を用いた病理組織学的解析を施行する。また心筋梗塞モデル・ベータ受容体持続刺激モデル・カルシウムチャネル高活性モデルを用いて表現型解析を施行していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は動物代(動物飼育費・動物購入費・特殊食餌及び薬剤)の消耗品費にて50万円及び細胞実験関連(細胞培養器具・細胞培養試薬)、分子生物学的試薬等の消耗品費にて50万円、論文掲載費用等10万円を使用する計画である。
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