2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23659126
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
柴田 重信 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (10162629)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
Keywords | 体内時計 / 運動 / グルコース / 骨格筋 / 時刻 / 週間 / エネルギー代謝 |
Research Abstract |
体内時計と薬物の作用機構の関係を調べる学問として、時間薬理学がある。実際、体内のコレステロールを低下させる作用が顕著なスタチン系化合物は夕方に服用すると効果が高い。これは、コレステロール合成酵素のHMG-CoA reductaseの活性が夜間に高いことに起因する。このように体内時計の機能と薬物の作用には密接な関係がある。同じことを、体内時計と運動の関係で調べた。つまりトレッドミル運動を1日の中のどの時間帯でおこなうと、運動効果が一番出てくるかを調べることである。今回は30分のトレッドミル運動を行い、その時の筋肉へのグルコースの取り込みを2-deoxyglucoseの筋への取り込み量として調べた。筋肉は脹脛の白筋で無酸素運動にかかわる腓腹筋と赤筋で有酸素運動のためにミトコンドリアが発達しているヒラメ筋とした。まず、夕方の運動が最も効果的に2-deoxyglucoseを取り込むことが分かった。また腓腹筋とヒラメ筋を比較すると、ヒラメ筋の方が、2-deoxyglucoseの取り込み反応が大きいことが分かった。次に運動の強度を変え実験を行った。夕方運動群と朝型運動群で運動強度を歩行程度、軽いジョギング程度、かなりの強度の運動に区分して実験を行った。その結果、夕方運動群では、運動強度に比例して、グルコースの取り込みは増大し、歩行程度の運動ではグルコースの取り込み増大は見られなかった。一方、朝方運動群はいずれの強度でも、グルコースの取り込み増大は見られなかった。次に、高脂肪食負荷による肥満動物の筋肉のグルコースの取り込みを調べたとこる、まず運動負荷前のグルコースの取り込みが低かった。次に運動負荷をかけているのもかかわらず、グルコースの取り込みは、対象動物より弱かった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まず、萌芽研究である「時間運動学」や「週間運動学」なるものが実際可能であるかが大きなテーマである。今年度は時間運動学の視点からの研究を行った。従来より時間薬理学と時間栄養学は基礎研究から実践研究に向かって進んでいるが、時間運動学の取り組みは今回が初めてである。トレッドミル運動を朝と夕に行った結果、夕方の運動が効果的で、腓腹筋やヒラメ筋への糖の取り込みが増大することが分かった。このように運動の時間帯で、筋肉の糖の取り込みすなわちエネルギー代謝が変化することは興味がある。この場合、運動による糖の取り込みが実際、インスリン抵抗性の改善等に寄与しているか否かは不明であった。また、本研究では、肥満モデルマウスである高脂肪食負荷でも同様の結果が得られていることから、実際の臨床応用や病態状態での治療効果として役立つ可能性を示せた。全体的に達成度は十分であると考えられる。時間栄養学として高脂肪食を朝食と夕食で食べる場合にはいずれがより肥満になるかを調べた研究があるので、高脂肪食提示時刻と運動時刻を組み合わせた研究を展開すると面白いと思われる。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度は、運動をインフラディアンリズムとして7日単位で行うことを考える。つまり5日間のweekdayと、2日間の weekendの考えを取り入れる。Weekdayに運動習慣はあるが、weekendは運動をしていない群や、逆にweekdayは運動習慣がないがweekendは運動を行っている群などを用意し、1週間単位の運動が肥満に及ぼす影響について調べる。(1)まず、7日間運動群、5日間運動+2日間非運動、2日間運動+5日間非運動、7日間非運動群とする。これらの実験は、習慣的な運動になるので、輪回し運動とした。まずは、運動の時間帯設定は行わず、1日の中でも自由に運動をさせるプロトコールとした。このような運動を一月行い、体重、摂食量、体脂肪などを測定する。(2)weekday とweekendの考え方を、餌投与の実験に拡大して行う。具体的には、7日間高脂肪食群、5日間高脂肪食+2日間通常食群、2日間高脂肪食+5日間通常食群、7日間通常食群とする。高脂肪食群は餌の脂肪量を15%に増量したものを用意する。この実験で、どのような食パターンが肥満、体脂肪増加になるかを明らかにする。(3)実験(1)と実験(2)を組み合わせた実験を行う。具体的には、高脂肪食を負荷しているときに運動をするのと、逆に高脂肪食のときは運動せず、通常食の時に運動を負荷する群を用意する。すなわち運動と食の組み合わせで、肥満予防に最も効果的な組み合わせを見出さす。さらに、運動の効果が確認できれば、朝の運動と夕方の運動のいずれがより効果的であるかを明らかにする。本研究から、「週間運動学」と「時間運動学」の視点から、肥満予防の解明ができる可能性が高い。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究ではマウスが大量に必要となる。1匹1500円x200匹=30万円。長期間飼育するので、餌、おがくず代がかかる。餌5000円x50袋=25万円。おがくず代、5000円x50箱=25万円。特殊な餌代、65000円x4袋=26万円。PCRキット、ELISAキット=15万円。成果発表旅費。北海道3泊4日、7万円
|
Research Products
(2 results)