2012 Fiscal Year Research-status Report
AAVベクターと人工GPCRを用いたナルコレプシーの遺伝子治療法の開発
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23659134
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
三枝 理博 金沢大学, 医学系, 准教授 (20296552)
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Keywords | 睡眠・覚醒 / オレキシン / ノルアドレナリン / セロトニン / ナルコレプシー / DREADD |
Research Abstract |
睡眠障害・ナルコレプシーは、オレキシン産生ニューロンの特異的な変性によって生じる。昨年度はナルコレプシー・モデルマウス(既知の二つのオレキシン受容体を両方欠損したOX1R-/-;OX2R-/-マウス)を用い、ナルコレプシーの二つの特徴、覚醒の分断化(睡眠発作に対応)とカタプレキシー(情動性脱力発作)について、オレキシンニューロンによる青班核ノルアドレナリン作動性ニューロンの活性化が前者を、背側逢線核セロトニン作動性ニューロンの活性化は後者を抑制することを示した。 今年度はさらに、これらのニューロンを人為的に直接活性化することでナルコレプシーの症状を改善できるか検証した。DREADD (designer receptors exclusively activated by a designer drug)と名付けられた変異型m3ムスカリン受容体(hM3Dq)は、生理的濃度の内在性リガンド・アセチルコリンでは活性化されず、合成化合物clozapine-N-oxide (CNO)の腹腔内投与によって活性化される。ナルコレプシーのモデルマウスであるオレキシンニューロン欠損マウスにおいてAAVベクターにより、青班核ノルアドレナリン作動性ニューロン、あるいは背側逢線核セロトニン作動性ニューロンに選択的にhM3Dqを発現させた。CNO投与により、前者の場合は覚醒持続時間が有意に増加し、後者の場合はカタプレキシーが抑制された。 これらの結果は、昨年度に明らかにした事実をさらに裏付ける。さらに、予め有効性・安全性の高いことが保証されている薬剤のみをリガンドとする人工受容体を必要最小限のニューロンに遺伝子導入し、その薬剤を服用して当該ニューロンを活性化することで症状を抑えるとの、遺伝子治療法の新たなコンセプトに繋がるものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究調書で記述した研究目的を、概ね達成できた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究で明らかになった、オレキシンニューロンにより直接制御され、睡眠・覚醒調節に重要な役割を果たす下流ニューロン、青班核ノルアドレナリン作動性ニューロン、背側逢線核セロトニン作動性ニューロンについて、さらにこれらのニューロンの下流で機能するニューロンの同定を試みる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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