2011 Fiscal Year Research-status Report
mPGES-1発現阻害薬のリード化合物探索とターゲット分子同定
Project/Area Number |
23659138
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
笹栗 俊之 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (30261209)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 富美 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (50274436)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
Keywords | 抗炎症薬 / mPGES-1 |
Research Abstract |
我々は、細胞性粘菌が合成・分泌する低分子化合物differentiation-inducing factor(DIF)が、膜結合型プロスタグランジンE2合成酵素-1(mPGES-1)の遺伝子発現を強力に抑制することを発見した(特許出願2009-238935)。mPGES-1は炎症反応において重要な役割を担っており、心筋梗塞など心血管イベントの発生率を上昇させるという重大な有害反応を有するシクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)をターゲットとする既存抗炎症薬に代わる、新規抗炎症薬の創薬ターゲットとして注目されている。 本研究では、天然化合物ライブラリーからDIF以外の新たなmPGES-1発現阻害物質をスクリーニングし、全く新しい機序の抗炎症薬を開発するためのリード化合物を探索して、そのターゲット分子の同定を含む作用機序の解明を試みることを目的としている。 そこで、本年度は、理化学研究所から提供を受けた天然化合物ライブラリーを用いて、新たなmPGES-1発現阻害物質のスクリーニングを行った。96穴プレートにHeLa細胞を培養し、ヒトmPGES-1プロモーター活性に対する天然化合物の影響をルシフェラーゼアッセイにより評価した。現在までに、80種類の天然化合物について評価を行ったが、そのうち2種類の有力な新規mPGES-1発現阻害物質を見出した。現在、それらの物質がmPGES-1タンパク質発現量に及ぼす影響、並びにmPGES-1のプロダクトであり炎症惹起物質であるPGE2の産生量に及ぼす影響を検討している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
当初の研究計画では、平成23年度に、(1) ルシフェラーゼアッセイによるmPGES-1発現阻害物質のスクリーニング(2) DNAマイクロアレイを用いたmPGES-1発現制御に係る遺伝子群の同定を行う予定としていた。 (1)では、理化学研究所の天然化合物バンクを利用し、24,700種類におよぶ化合物のスクリーニングを行う予定であった。スクリーニングを効率よく行うため、新しく96穴プレートを用いたmPGES-1プロモーター活性測定システムの構築が必要となった。ヒト子宮頚癌由来細胞株HeLaを96穴プレートにて培養し、これにヒトmPGES-1プロモーターを組み込んだルシフェラーゼアッセイベクターを導入するというものであるが、実験を開始した時点では、期待するほどのプロモーター活性値が得られなかった。これを改良すべく、細胞数や培養時間等の培養条件や、ベクターの濃度、導入用試薬の分量等の導入条件など、種々の実験条件の検討を行った。このように、活性測定系の構築に予想以上の時間がかかったため、当初の実験計画ではもう少し早い時期からスクリーニングが実施できる見込みであったが、計画よりも遅れている。 (2)については、mPGES-1発現抑制物質によって制御を受ける遺伝子群を同定するために、当該物質を投与した培養細胞の発現プロファイルをマイクロアレイにて経時的に測定し、全ゲノムを対象とした網羅的な探索と、時間軸に沿った発現変動遺伝子群の解析を行う予定であったが、(1)のスクリーニングが進んでおらずmPGES-1発現抑制物質の同定が終了していないので、実施していない。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究では、mPGES-1発現阻害という新しい作用機序を有し、副作用の少ない抗炎症薬を開発するためのリード化合物と創薬ターゲット分子の同定を目指している。 平成24年度は、当初平成23年度に計画していた(1)mPGES-1の遺伝子発現を抑制する化学物質(天然化合物)のスクリーニングを終了し、そこから絞り込んだmPGES-1発現阻害物質を用いて、(2)mPGES-1遺伝子発現抑制と連動する遺伝子群のDNAマイクロアレイによる網羅的解析を行う予定である。 (1)に関しては、mPGES-1プロモーター活性測定系がほぼ確立できたので、今後は天然化合物のスクリーニングが順調に実施できると見込まれる。一方、現在までに80種類の天然化合物についての評価を行い、2種類の有力な新規mPGES-1発現阻害物質を見出したので、それらがmPGES-1蛋白質発現に及ぼす影響とmPGES-1のプロダクトであり炎症惹起物質であるPGE2産生量に及ぼす影響の検討も同時に進める予定である。 (2)に関しては、mPGES-1の蛋白質発現を低下させうる複数の有力な候補化合物を見出した後、これらのmPGES-1発現抑制物質によって制御を受ける遺伝子群を同定するために、当該物質を投与した培養細胞の発現プロファイルをマイクロアレイにて経時的に測定し、時間軸に沿ったmRNAの網羅的な発現変動の解析を行う予定である。 最終的には、新規抗炎症薬のターゲット分子となるタンパク質を同定し、スクリーニングにより見出された化合物をリード化合物とした新規抗炎症薬の開発を目指す。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
主に消耗品費に用いる予定。
|
Research Products
(1 results)