2011 Fiscal Year Research-status Report
加齢に伴い変動するアミロイド凝集体の網羅的プロテオーム解析
Project/Area Number |
23659150
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
樋口 京一 信州大学, 医学系研究科, 教授 (20173156)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
澤下 仁子 信州大学, 医学系研究科, 助教 (40359732)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | アミロイド / 蛋白質 / 凝集体 / プロテオーム / 老化 / 質量分析 / 恒常性 / ApoA-II |
Research Abstract |
[研究の目的]アミロイド線維/凝集体は、異常構造を持つ蛋白質が線維状に集合したもので、蛋白質恒常性 (proteostasis) の破綻を引き起こすが、一方では生理的及び防御的役割も果たすと考えられている。ユニークなアミロイド線維抽出法を用いて、若齢から老齢に至るモデルマウスからアミロイド線維/凝集体を採取し、網羅的プロテオーム解析を試みる。[研究実施計画]若、壮、中、老年の(1)標準系統C57BL/6、(2)老化アミロイドーシスを発症するApoa2c(老化アミロイド蛋白質)過剰発現マウス、(3)Apoa2欠損マウス、(4)熱ショック転写因子(HSF1)欠損マウス、の肝臓、脳、心臓、筋肉を解析する。同定された蛋白質の量的加齢変化、アミロイド線維形成能、細胞内分布、さらに機能の解析を行う[平成23年度研究実績]信州大学ヒト環境科学研究支援センター動物実験施設で、Apoa2欠損マウス( C57BL/6-Apoa2-/-)とApoA-IIを発現するSAMR1Cマウスを2ヶ月齡と28ヶ月齡で屠殺し、肝臓、脳、心臓及び筋肉を採取した。また2ヶ月齡のSAMR1Cマウスにアミロイド線維(AApoAII)を投与しアミロイドーシスを誘発して10ヶ月後に臓器を採取した。各臓器より生理的食塩水可溶性蛋白質を除去した後、蒸留水にミセル状にsuspend される分画を『アミロイド線維/凝集体蛋白質』として分取した。アミロイド線維/凝集体分画を SDS-PAGE電気泳動で解析すると伴に、RapiGest溶液で可溶化して、還元ーアルキル化、トリプシン消化後に、信州大学ヒト環境科学研究支援センターのLC/MS/MSシステムで解析した。得られたデータをProteinLynx Global Serrverで同定と定量を行った。結果として老齢マウスの脳に特異的か、含有量の増加が認められるいくつかの蛋白質が同定された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
老齢マウス(28ヶ月齡、Apoa2-/-)と重度のアミロイド沈着が見られるSAMR1Cマウス(アミロイドーシス誘発後10ヶ月)の作成に時間が取られたため、LC/MS/MSシステムを用いた網羅的解析の開始が遅くなった。また筋肉や心臓でのアミロイド線維/凝集体分画の分取は予想外に手間取っている、 しかし、心配したアミロイド線維/凝集体分画の可溶化に関しては、最初は蟻酸とグアニジン塩酸で処理する予定であったが、RapiGest溶液処理で、可溶化とトリプシン処理は問題なく行われることが明らかになった。LC/MS/MSシステムとProteinLynx ソフトウエアーの解析では、従来の我々の結果と同様にヒストンファミリーが主要な蛋凝集体蛋白質として同定されたが、それ以外に多数の候補蛋白質を同定することが出来たのは予想外に順調に進んだ成果である。今後は機能や老化に伴う動態の解析が加速度的に進むと期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
23年度の研究計画を継続する。 特にマウス(特に、老齢、中年)のマウスを増やすことが急務である。各アミロイド線維/凝集体分画の中で、肝臓や脳は抽出も難しく無く、またいくつかの蛋白質が同定できて来たので、このまま解析を進めて、より信頼性を高める予定である。一方心臓及び筋肉からは、アミロイド線維/凝集体の抽出はなかなかうまく行っていないのが現状である。特にアミロイド沈着臓器として重要である心臓からの抽出は組織の量が少ないこともあり、慎重に行う予定である。効率的な抽出方法を検討する必要がある。また現在は 老齢(~2年齢)HSF1欠損マウスを飼育・作成中である。 年齢に達したら屠殺して、各臓器を採取する。同定できた、蛋白質については、より詳細な機能や加齢に伴う動態を解析するために、a) 抗体(多くの抗体は市販の抗体を購入予定である)を用いて、細胞内や組織分布、加齢に伴う変動を解析する。b) リコンビナント蛋白質や部分ペプチドを作成し、実際にアミロイド線維形成能があるか?試験管内での線維形成反応で解析する。c) 蛋白質の末端にGFPやc-Mycなどの標識蛋白質を結合した融合蛋白質を作成し,細胞内での動態を解析し、トランスジェニックマウスを作成して加齢に伴うアミロイド形成を解析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
老齢マウス(28ヶ月齡、Apoa2-/-,HSF1-/-, 及びC57BL/6J)と重度のアミロイド沈着が起こっているSAMR1Cマウス(アミロイドーシス誘発後10ヶ月)の作成に時間が取られたため、LC/MS/MSシステムによる質量解析の開始が遅くなった。従って解析の委託料が減少した。また液体クロマトグラフィー用のカラムは共同の物を使用したため、減額となった。また購入予定であった抗体等の予算も減額となった。従って24年度へ55万円程の繰り越しとなった。24年度はLC/MS/MSの解析委託費用とソフトウエアーの使用量が急増する予定である。さらに23年度に同定された蛋白質(例えば、Brain Acid Soluble Pritein やHSP蛋白質など)や24年度に新たに同定される蛋白質の抗体の購入に多額の出費を予定している。さらにアミロイド線維/凝集体の分画に含まれる、蛋白質の一部分の合成ペプチドを作成して、試験管内での線維形成のキネティックを解析するため、ペプチド合成に出費が必要となる。また形成された線維・凝集体の蛋白質化学的及び、毒性等の生物学的特性を解析するために、高速液体クロマトグラフィー用ゲル濾過カラムを購入する。若齢から高齢までの充分な匹数のマウスを解析に使用するためには多くのマウスを飼育・維持する必要があり、そのために多額のマウスの飼育料とケージ交換、日々のマウスの生死の確認、マウスの屠殺、解剖、組織採取、組織切片作製などの補助を行う比較的専門知識と技術を有する人材の雇用(アルバイト)のために出費する予定である。
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