2012 Fiscal Year Research-status Report
加齢に伴い変動するアミロイド凝集体の網羅的プロテオーム解析
Project/Area Number |
23659150
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
樋口 京一 信州大学, 医学系研究科, 教授 (20173156)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
澤下 仁子 信州大学, 医学系研究科, 助教 (40359732)
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Keywords | アミロイド / タンパク質 / 凝集体 / プロテオーム / 老化 / 質量分析 / 恒常性 / マウス |
Research Abstract |
[研究の目的]アミロイド線維/凝集体は、異常構造を持つタンパク質が線維状に集合したもので、タンパク質恒常性の破綻を引き起こすが、一方では生理的及び防御的役割も果たすと考えられている。ユニークなアミロイド線維抽出法を用いて、若齢から老齢に至るモデルマウスからアミロイド線維/凝集体を採取し、網羅的プロテオーム解析を試みる。 [研究実施計画]若、壮、老年の①標準系統C57BL/6、②老化アミロイドーシスを高発症するSAMR1-Apoa2c (SAMT1C) マウス、③Apoa2欠損(KO)マウス、④熱ショック転写因子(HSF1)KOマウス、の肝臓、脳、心臓、筋肉を解析する。同定されたタンパク質の量的加齢変化、アミロイド線維形成能、細胞内分布、さらに機能の解析を行う。 [平成24年度研究実績]Apoa2KOマウスとC57BL/6 (野性型)マウスを2ヶ月齡と28ヶ月齡で屠殺し、肝臓、脳、心臓及び筋肉を採取した。また2ヶ月齡のSAMR1Cマウスにアミロイド線維(AApoAII)を投与しアミロイドーシスを誘発して10ヶ月後に臓器を採取した。各臓器より生理的食塩水可溶性タンパク質を除去した後、蒸留水にミセル状にsuspend される分画を『アミロイド線維/凝集体タンパク質』として分取した。アミロイド線維/凝集体分画を RapiGest溶液で可溶化して、還元ーアルキル化、トリプシン消化後に、LC/MS/MSシステムで解析した。得られたデータをProteinLynx Global Serverで同定と定量を行い、老齢マウスのみで観察されるか、有意に増加するタンパク質と、老齢マウスで消失するか、減少するタンパク質を同定した。また誘発したAApoAIIアミロイド沈着に伴い出現するApoA-II 以外のタンパク質を同定した。これらの新規のアミロイド関連タンパク質を抗体等を用いて解析中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
野性型(C57BL/6) とApoa2KOの老齢マウス(24~28カ月齡)の組織の採取は順調に進んでいるが、他の系統マウスの組織の採集はやや遅れている。脳および肝臓のアミロイド線維/凝集体タンパク質の同定は、軌道に乗って来ている。それぞれマウス4匹ずつの解析がほぼ終了して、統計計算が可能となっており、かなり多数のタンパク質がリストアップされているが、タンパク質の数をしぼって解析を行う。特に老齢マウスの脳では中間系フィラメント関連のタンパク質、補体関連タンパク質の増加が同定されているので、これらのタンパク質の機能解析や、アミロイド線維形成能の解析の準備を進めている。肝臓での定量解析は、まだ完成していないが、既にデータは取り終えている。肝臓でのAApoAIIアミロイド沈着に伴い増加するタンパク質としては、ApoEやClusterin等多数のタンパク質が同定されているので、これらのアミロイド関連,あるいは沈着調節タンパク質の機能解析が急務であり,現在進行中である。しかし筋肉や心臓でのアミロイド線維/凝集体分画の分取は充分な量が分離できず予想外に手間取っている。 高齢マウスや組織の準備の若干の遅れ以外には、LC/MS/MSシステムとProteinLynxソフトウエアーを用いた解析の基礎的な準備に時間を要した。特にタンパク質の可溶化、マウスデータベースの調整、定量性の確立等に時間を要したが、現在は解決している。また、大学全体でのLC/MS/MSシステムの使用頻度が増大しているため、解析が順番待ちになる事が増えて来ている。マウス組織の採取、LC/MS/MSシステムの解析、大量のデーターの処理方法等の基本的な解析技術が確立したので、本年度は、新たなアミロイドタンパク質の同定とその機能や特性の解析に集中する。
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Strategy for Future Research Activity |
最低限のマウスの生体資料の採取と基本的なLC/MS/MSシステムの解析技術の確立は達成した。25年度は出来るだけ多くのマウス組織からのアミロイド様タンパク質を分取して、LC/MS/MSシステムの利用によるタンパク質の同定と定量を可能な限り実施する。さらに同定したタンパク質の加齢に伴う動態を解析するために、マウス組織でのWestern blot解析や、免疫組織化学染色を実施する。アミロイド線維形成能に関しては、Tango等のソフトウエアーを用いてアミロイド原性の高い領域のペプチドを合成するか、リコンビナントタンパク質を作成して、試験管内でのアミロイド線維形成を解析する。AApoAIIアミロイド線維沈着に伴い増加するタンパク質に関しては、その機能を解析するとともに、アミロイド線維形成の調節機能の解析を独自の試験管内線維形成システムを利用して行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初購入を予定していた液体クロマトグラフィー用のカラムは共同の物を使用する事が可能となった。また購入予定であったマウスを交配により作出した。同定したタンパク質の抗体の購入額が予定よりも安価であり,また期日内に納品が間に合わないものがあった。さらにアルバイトの雇用を見送った。これらの結果、未使用額が発生した(約78万円)。次年度(25年度)の研究費の使用計画は、LC/MS/MSの解析委託費用とソフトウエアーの使用量が大きく増加する予定である。さらに24年度に同定されたタンパク質(Brain Acid Soluble Protein や各種中間系フィラメントタンパク質、ApoE, Clusterin など)や25年度に新たに同定されるタンパク質の抗体の購入に使用する。さらに同定されたアミロイド線維/凝集体の分画に含まれるタンパク質のアミロイド線維形成が予想される合成ペプチドを作成して、試験管内での線維形成のキネティックを解析する。そのため、ペプチド合成に出費が必要となる。また形成された線維・凝集体のタンパク質化学的及び、毒性等の生物学的特性を解析するために、様々な消耗品を購入する。若齢から高齢までの充分な匹数のマウスを解析に使用するためには多くのマウスを飼育・維持する必要があり、そのためにマウスの飼育料を計画している。またケージ交換、日々のマウスの生死の確認、マウスの屠殺、解剖、組織採取、組織切片作製などの補助を行う比較的専門知識と技術を有する人材の雇用(アルバイト)のために使用する。
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Research Products
(18 results)