2012 Fiscal Year Annual Research Report
先天性筋ジストロフィーに関わる機能性糖鎖の発現制御機構に関する研究
Project/Area Number |
23659153
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
岡 昌吾 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (60233300)
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Keywords | ジストログリカン / 硫酸基転移酵素 / 糖鎖 / 筋ジストロフィー / ラミニン |
Research Abstract |
α-ジストログリカン(α-DG)上に発現する糖鎖は、ラミニンとの結合という明確な機能を有することや、その糖鎖合成不全が先天性筋ジストロフィーの原因となることが知られている。そこで申請者は、α-DGの機能調節に関わる分子として新たに見出した硫酸基転移酵素HNK-1STを用いて、α-DG上の機能性糖鎖の役割を明らかにすることを目的として研究を行い以下の成果を得た。 1)α-DG上の機能性糖鎖発現調節におけるHNK-1STの役割 α-DG上に発現する糖鎖をラミニンとの結合能やIIH6(機能性糖鎖を認識するモノクローナル抗体)との反応性を指標としてHNK-1STの役割を評価した。その結果、HNK-1STはα-DGの糖鎖付加状態を変化させ、ラミニンとの結合能やIIH6との反応性を減少させる能力を有すること。また、HNK-1STによるα-DG上の糖鎖発現制御には硫酸基転移活性が必須であり、HNK-1STが直接α-DG上の糖鎖を硫酸化することを証明した。 2)α-DG上の機能性糖鎖によるメラノーマ細胞の移動性調節 HNK-1STによるα-DG上の糖鎖発現制御の生物学的な役割について、メラノーマ細胞を用いて解析した。その結果、メラノーマ細胞にレチノイン酸を添加するとHNK-1STの発現が上昇するとともに、その移動性の低下が観察された。この細胞移動性の制御にα-DG上の糖鎖が関与すること、またレチノイン酸の添加によってα-DGの糖鎖付加状態が低下し、ラミニン結合活性が減少することを明らかにした。この細胞移動性の低下はHNK-1STのノックダウンによって回復したことから、レチノイン酸によって発現誘導されたHNK-1STがα-DGの糖鎖付加を抑制し、その結果メラノーマ細胞の移動性が低下したと考えられた。本研究により得られた知見はα-DG上の機能性糖鎖発現調節機構を解明する上において重要なものである。
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