2011 Fiscal Year Research-status Report
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23659165
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
前川 利男 独立行政法人理化学研究所, 石井分子遺伝学研究室, 副主任研究員 (90201764)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | ストレス / 転写因子 / ATF-7 / エピジェネティクス / CRE / 低たんぱく質 / コレステロール生合成 |
Research Abstract |
ストレスで活性化される転写因子ATF-7の標的遺伝子を探索するために、マウスのマクロファージとMEFを材料に用い、ATF-7抗体を使ってChIP-on-ChIPを行った。この結果、マクロファージとMEF において、ATF-7がプロモーター領域に結合していて、マクロファージではヒストンH3K9のジメチル化の程度と相関が高いことが明らかになった。MEFにおける結合部位はCREコンセンサス配列そのもので有ったが、マクロファージではCRE配列とは大きく異なっていた。このことから、マクロファージでは何らかの因子が結合して、認識配列がCRE配列と異なっている可能性がある。また、ATF-7遺伝子欠損細胞ではマクロファージとMEFともに結合がほとんど見られないことから、この結合はATF-7特異的であることが証明された。 マウスの雄親を低蛋白質の餌で飼育すると、通常の餌で飼育した場合と比較して、子供の肝臓でのコレステロール生合成系の遺伝子発現が上昇することが報告された(B, Carone 他、 Cell, 143, 1084, 2010)。そこで、この実験系におけるATF-7の関わりを検討するために、野生型の雄とATF-7 KOの雄で子供の肝臓での遺伝子発現に違いが有るかどうかを比較した。その結果、野生型で見られる子供の肝臓でのコレステロール生合成系の遺伝子発現上昇がATF-7 KOの雄では全く見られない事が分かった。以上から、雄親の餌の違いを雄の精子を通して子供に伝える機構にATF-7が関与していることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画は予定通り進行している。マウスの雄親を低蛋白質の餌で飼育すると、野生型では子供の肝臓でのコレステロール生合成系の遺伝子発現上昇が見られるが、親がATF-7 KOマウスの場合このような発現上昇が全く見られない事が分かった。雄親の餌の違いを子供に伝える機構にDNAのメチル化やヒストンの化学修飾等のエピジェネティクスが関与すると考えられている。実際に雄親から精子を伝わって餌の情報が伝達されるメカニズムにATF-7がどのように関与しているのか、非常に興味深く、今後多くの新たな知見が得られると期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方針は研究計画の通りである。マウスの雄親を低蛋白質の餌で飼育すると、野生型では子供の肝臓でのコレステロール生合成系の遺伝子発現上昇が見られる事が明らかになったので、ストレス刺激として低蛋白質の餌での飼育を最優先する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究計画の通りであり、変更はない。
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