2011 Fiscal Year Research-status Report
がんの間質細胞遺伝子依存性を制御する転写因子網の解明
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23659168
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
五十嵐 和彦 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (00250738)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 分子腫瘍学 / 転写因子 / ケモカイン / サイトカイン / Bach1 |
Research Abstract |
がんの形成には間質細胞とのシグナル相互作用が重要であり、間質細胞側の機能変化や遺伝的変化もがん進展に重要と予想される。しかし、間質細胞側の制御システムには不明な点が多い。本研究では、がん細胞が微小環境中の間質細胞の「特定の機能に強く依存する」(stroma gene addiction)というアイデアに基づき、stroma addictionをマウスモデルで評価する実験系を開発し、stroma gene addictionに関わる遺伝子・分子の候補を網羅的に調べる。今年度は、転写因子Bach1に着目し、Bach1ノックアウト線維芽細胞のがん間質細胞としての性状を野生型線維芽細胞と詳細に比較した。サイトカインやケモカイン分泌能、がん細胞増殖刺激能、酸化ストレス防御能に大きな差をみとめた。Bach1ノックアウト細胞は酸化ストレスに応答してp53が活性化し、細胞老化の状態を発現しやすい。すなわち、Bach1はp53を抑制していることを報告している。しかし、このサイトカインやケモカイン分泌能は細胞老化やp53とは関係ない変化であった。すなわち、Bach1は細胞老化とは独立して分泌能を制御することが考えられた。Bach1の作用点候補(抑制対象経路)として、NF-kB転写因子経路が浮かび上がってきた。個体レベルでも検証するために、野生型マウスおよびBach1ノックアウトマウスにマウスがん細胞を移植し、その増殖や転移能を比較した。さらに、ヒトがん組織におけるBach1の変動を検出するために、組織染色に使えるモノクローナル抗体の作成をすすめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでヒトがんにおけるBach1の機能は、GWAS解析などから想定されてきたものの、分子機能解析レベルではほとんど進んでいなかった。その大きな理由は、病理組織解析に用いることのできるヒトBach1抗体が世の中に存在しないことであった。私たちは、この点を大きな問題と考え、モノクローナル抗体作成に挑戦してきた。少なくともヒトがん細胞を染色できそうな抗体クローンを複数えており、大きな進展といえる。間質細胞におけるBach1の機能も明確になった。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的には計画調書に記述した内容に沿って進める。しかし、モノクローナル抗体作成に成功したことから、ヒトがん組織の解析を追加する。コンディショナルノックアウトマウス作製については難航しており、解決策を再検討する必要がある。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
基本的にはマウス実験、細胞培養実験の消耗品に充当する。特に、培養用血清、遺伝子発現プロファイリング用アレイ試薬などを多めに購入する。
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Research Products
(1 results)