2011 Fiscal Year Research-status Report
PI3KクラスIIα酵素欠損マウスにおける血管健常性の破綻
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23659170
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
多久和 陽 金沢大学, 医学系, 教授 (60171592)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | イノシトールリン酸 / PI3キナーゼ / 血管障害 / 動脈瘤 / 血管透過性 |
Research Abstract |
本年度は、以下の研究に取り組んだ。PI3K-C2alphaの全身+/-ノックアウト(KO)マウス、内皮細胞(EC)特異的+/-KOマウス、平滑筋(SM)特異的-/-KOマウスの3種のKOマウス(各+/+マウスを対照とする)用いて血管障害特に動脈瘤形成を、また血小板活性化因子(PAF)投与によるアナフィラキシーショックモデルにおける血管透過性を、PI3K-C2alpha全身+/-マウスとコンディショナルEC特異的-/-マウスで検討し、PI3K-C2alpha の血管健常性維持おける役割とその機構の探索・解明に取り組んだ。 全身性+/-マウスにおいてAngII慢性投与により誘発された大動脈瘤では、血管壁のマクロファージ浸潤が亢進していた。これらの変化は、内皮特異的PI3K-C2alphaKO(-/-)マウスで再現されたが、平滑筋KOマウスでは見られなかった。全身性PI3K-alpha +/-マウスにおいて、VEGF皮下注射により誘発される血管透過性が野生型マウスに比較して亢進していた。血小板活性化因子 (PAF) 負荷により誘発されるアナフィラキシー死は全身性+/-マウスで亢進し、血管透過性も亢進していた。コンディショナルEC特異的-/-マウスでも同様であった。インビトロ培養血管内皮細胞において、PI3K-C2alphaは血管内皮細胞間接着形成に必要であり、内皮細胞の透過性を抑制した。以上の結果より、PI3K-C2alphaは発生期および成獣マウスにおける虚血後・腫瘍血管新生に必須であった。また、血管透過性とAngIIによる血管障害反応を抑制したことから、血管健常性維持にはたらいていることがあきらかとなった。PI3K-C2alpha は、循環器病の新しい治療標的となる可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
PI3K-C2alphaの細胞内機構に解明のためには、高解像度のイメージングシステムの開発が必要であり、現在、多チャンネルのリアルタイムイメージング装置を立ち上げつつあり、これにより細胞内におけるPI3K-C2alphaのおよびその産物であるPI3Pの局在を明らかにし、研究の進展を加速できる。
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Strategy for Future Research Activity |
おおむね申請書に記載の計画にしたがって研究を推進する。これまでに得られた研究成果により、PI3K-C2alphaの作用点は細胞内膜構造におけるPI3P産生であり、これによって小胞輸送を調節することによると考えられる。したがって、当初計画の血管保護作用を有する生理活性因子投与の効果は実施せず、細胞内小胞輸送の障害が血管健常性を損なう機構の解明に注力する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
PI3K-C2alpha-KOマウスにおける血管障害の分子機構の解析:大動脈瘤形成には、内皮細胞間接着の異常が少なくとも部分的には関与している。+/-と+/+マウス大動脈を接着分子であるVE-カドヘリン特異的抗体で免疫染色し、共焦点レーザー顕微鏡観察により、3次元画像を再構成し、インビボでの内皮細胞間接着の異常を検討する。また、透過性異常をエヴァンスブルー色素法で定量的に評価する。炎症性サイトカイン(TNFa,IL-6,IL-8,SDF-1など)の遺伝子発現、MMPの蛋白発現と活性測定(in situザイモグラフィー法)を行う。血管透過性異常の分子機構の解析:PI3K-C2a特異的siRNAによりPI3K-C2alphaをノックダウンしたヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)とコントロールHUVECにおいて、以下の検討を行う。VE-カドヘリンの免疫染色・蛍光標識タンパクのライブイメージングにより、内皮細胞間のアドヘーレンスジャンクションの異常を検討する。さらに、この異常がVE-カドヘリンの細胞内(小胞により媒介される)輸送、アドヘーレンスジャンクションでの複合体系形成の障害によるかを検討する。PI3K-C2alphaとその産物PI-3Pの局在を可視化し、PI3K-C2alpha/PI-3PとVE-カドヘリン輸送異常との関係を明らかにする。PI3K-C2alphaは小胞輸送を介して細胞内シグナル伝達において重要な役割をはたす可能性がある。これまでの検討では、RhoファミリーSmall Gタンパクの活性化に特に必要である。ライブイメージング法を用いて、細胞内のどこでSmall Gタンパクが活性化され、この過程にPI3K-C2alphaがどのように関わるかを明らかにする。研究費は、内皮細胞とその培養液、siRNA合成キット、各種抗体、マウスの飼育経費、野生型マウスの購入にあてる。
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