2011 Fiscal Year Research-status Report
C型肝炎ウイルス感染B細胞でのA20分子異常による癌化メカニズムに関する研究
Project/Area Number |
23659177
|
Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
楠 英樹 国立感染症研究所, 血液・安全性研究部, 主任研究官 (90334060)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
Keywords | 分子腫瘍学 / A20 / B細胞リンパ腫 / HCV感染 |
Research Abstract |
本研究はHCV感染が原因で誘発される様々な病変の中で、特にB細胞リンパ腫発症メカニズムの解明に焦点を当てている。B細胞リンパ腫においてNF-κB抑制因子(癌抑制因子)の1つであるA20遺伝子が改変され機能消失が起きていることが報告され注目を集めている。そこで、(1) HCVプロテアーゼがA20分子を分解すること、(2)慢性C型肝炎患者由来B細胞(CHC-B細胞)で顕著に発現亢進しているAID(Activation-induced cytidine deaminase)がA20遺伝子に変異を導入していることを検討し、HCV感染によるA20分子の機能不活性化とB細胞リンパ腫発症との関連性を解明することを研究目的としている。1.A20蛋白質の発現解析:健常者とCHC-B細胞に関してA20のウエスタンブロット解析を実施した。その結果、A20はCHC-B細胞で顕著に発現亢進していることが明らかになった。更に、CHC-B細胞でA20の一部が分解されている可能性が示唆された。2.HCV NS3/4AプロテアーゼによるA20切断解析:CHC-B細胞におけるA20蛋白質の解析結果で示唆されたA20分解がHCV NS3/4Aプロテアーゼにより生じているかを検討した。リコンビナントA20とHCV NS3蛋白質・4Aペプチドを混合しA20分解の有無を調べた。また、293T細胞にA20とHCV NS3/4Aを共発現しA20分解の有無を調べた。本条件下では、HCVプロテアーゼによるA20の分解は確認されなかった。現在、更なる検討を行っている。3. AIDによるA20遺伝子変異導入解析:AIDがA20遺伝子に変異を導入するかどうかを検討するためにAID発現系を構築した。AID蛋白質の調製を進めている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、CHC-B細胞でA20の発現が顕著に亢進していること、A20の一部が分解されている可能性を明らかにした。また、HCVプロテアーゼが、NF-κB抑制因子(癌抑制因子)の1つであるA20分子の機能消失を引き起こすかどうかを検討した。その結果、HCVプロテアーゼはA20を分解しない可能性が示唆された。現在、更なる検討を実施し、本件の最終結論に達する予定である。一方、CHC-B細胞で顕著に発現亢進しているAIDがA20分子に遺伝子改変を引き起こしているかを検討するため、AID蛋白質の調製を進めている。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究実施計画通り、AIDによるA20遺伝子変異導入解析を中心に研究を進めていく。そのため、AID蛋白質の調製が必須となる。リコンビナントAID蛋白質を用いて、A20遺伝子変異導入の検出を核磁気共鳴(NMR)法で実施する。また、本研究から見出されるであろうA20変異体がNF-κB活性抑制を損失しているかを検討する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
分子生物学実験に必要な消耗品と一緒に、AID蛋白質調製に関わる試薬等、NMR測定・解析に必要な試薬・NMR測定管等、NF-κB活性測定の試薬等を物品費として計上する。
|
Research Products
(2 results)