2012 Fiscal Year Annual Research Report
C型肝炎ウイルス感染B細胞でのA20分子異常による癌化メカニズムに関する研究
Project/Area Number |
23659177
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Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
楠 英樹 国立感染症研究所, 血液・安全性研究部, 主任研究官 (90334060)
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Keywords | 分子腫瘍学 / A20 / B細胞リンパ腫 / HCV感染 |
Research Abstract |
本研究はHCV感染が原因で誘発される様々な病変の中で、特にB細胞リンパ腫発症メカニズムの解明に焦点を当てている。B細胞リンパ腫においてNF-κB抑制因子(癌抑制因子)の1つであるA20遺伝子が改変され機能消失が起きていることが報告され注目を集めている。そこで、(1) HCVプロテアーゼが、A20分子の機能消失を引き起こすこと、(2)慢性C型肝炎患者由来B細胞(CHC-B細胞)で顕著に発現亢進しているAID(Activation-induced cytidine deaminae)が、A20分子に遺伝子改変を引き起こしていることを検討し、HCV感染によるA20分子の機能不活性化とB細胞リンパ腫発症との関連性を解明することを研究目的とした。 今年度は、主に、AIDによるA20遺伝子変異導入のNMR解析を進めるため、AIDの大量発現系の構築と精製条件の確立を目指して研究を進めた。AIDのN末側にGSTタグやHisタグを付加させたコンストラクトを作製し大腸菌による発現及び精製を試みた。しかし、NMR解析に必要となる純度及び十分量を調製するのが困難であり、NMR解析まで到達することができなかった。現在、更なるAID調製の条件検討を実施している。 HCVプロテアーゼによるA20分子切断の可能性を検討したところ、A20切断を確認できなかったことから、CHC-B細胞内でのA20分子の分解は他の分子によって引き起されている可能性が高い。興味深いことに、CHC-B細胞内においてMALT1の発現亢進を確認した。MALT1はA20を切断し、37kDaのC末側分解物と共に30kDaのC末側分解物を産生することが知られている。本研究で観測したA20分解物の大きさ(30kDa)と一致していることから、 CHC-B細胞内で発現亢進したMALT1がA20を切断する可能性が考えられる。
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