2011 Fiscal Year Research-status Report
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23659178
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Research Institution | National Cancer Center Japan |
Principal Investigator |
荒川 博文 独立行政法人国立がん研究センター, 研究所, 分野長 (70313088)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | リソソーム / ミトコンドリア / タンパク質分解 / 品質管理 / 活性酸素種 / 酸化ストレス / 酸化タンパク質 / p53 |
Research Abstract |
我々はMieap遺伝子を同定し、そのコードする蛋白質が、ミトコンドリアの構造破壊を伴わないミトコンドリア内リソソームを誘導し(MALM:Mieap-induced accumulation of lysosome-like organelles within mitochondriaと命名)、ミトコンドリアの品質管理に極めて重要な役割を果たしている事実を発見した。本研究では、Mieapによるミトコンドリア内への構造破壊を伴わないリソソームの集積が、どの様なメカニズムによるものかについて明らかとするため、Mieap結合蛋白質の同定とその機能解析を行った。 Mieap結合タンパク質として、BH3ドメインを有するミトコンドリア外膜タンパク質であるBNIP3とNIX(BNIP3L)を同定した。内在性及び外来性いずれのタンパク質においても、MALM発生時における、MieapとBNIP3及びNIXの結合が証明された。BNIP3やNIXは、ミトコンドリア外膜においてMieapと結合した。内在性BNIP3あるいはNIXのノックダウンによりMALMの誘導は、ほぼ完全に抑制された。従来の報告とは異なり、BNIP3あるいはNIX単独の過剰発現は、ミトコンドリア膜電位の低下やそれに伴う細胞死の誘導は認めなかった。しかし、Mieap、BNIP3、NIXの3者を同時に過剰発現したときのみに、劇的な膜電位のの低下を認めた。ところが、この現象は、細胞死とは全く無関係であった。 以上の結果から、Mieapによるミトコンドリアの構造破壊を伴わないミトコンドリア内リソソームの誘導には、BNIP3とNIXが極めて重要な役割を果たしている事が明らかとなった。Mieap、BNIP3、NIXの3者のミトコンドリア外膜上での会合は、ミトコンドリア二重膜に未知の孔(通り道)を開口させる可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
(1)BNIP3やNIXの欠損によって、MALMの誘導がほぼ完全に抑制されたこと、(2)MieapとBNIP3及びNIXの結合はミトコンドリア外膜に限局していること、(3)MALM発生時において、Mieapはリソソームタンパク質と共に、ミトコンドリアマトリックスへ移動したにもかかわらず、BNIP3とNIXはミトコンドリア外膜上へ留まっていたこと、(4)Mieap、BNIP3、NIXの3者の結合は、劇的なミトコンドリア膜電位の消失を引き起こしたこと、(5)この結合が細胞死に関係しなかったこと、(6)膜電位の低下がシクロスポリンAで抑制されなかったことなどから、Mieapによって誘導されるミトコンドリア内リソソームは、ミトコンドリア外膜上のBNIP3とNIXが、Mieapと結合することによって形成されると推測されるミトコンドリア二重膜におけるporeを介して発生する可能性が示唆された(結果1~5)。しかも、このporeは、これまでに知られている細胞死誘導に重要な働きを有するmitochondrial permeability transition poreとは異なる全く新しいporeである可能性が示された(結果6)。 本研究課題は、ミトコンドリア内へリソソームが誘導されるという、現在の細胞生物学における常識では説明不可能な現象を想定し、そのメカニズムの解明をおこなうさきがけ的研究課題であるが、本年度の研究によって、ミトコンドリアの二重膜にこれまでに知られていないporeが形成される事が、この現象の進行に重要であることが示された。さらにそのメカニズムを直接制御する分子を結合タンパク質として明らかとした。これらの事実は、この現象自体が存在し、成立しうる可能性が高まったことを意味している。当初の予定より大幅な進展が達成できたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度からスタートしている網羅的なMieap結合タンパク質の同定を引き続き行っていく。手法は、国立がん研究センターの尾野らとの共同研究で開発した、免疫沈降物に対する網羅的なプロテオミクス解析法であるIP-2DICAL法を用いて、MALM誘導時のMieap結合タンパク質を解析する。候補タンパク質は、発現ベクターの構築による一過性の発現系による結合の確認や、特異抗体を用いた内在性タンパク質の結合の確認を行う。さらに、MALM誘導時の免疫染色解析を行い、Mieapとの局在の関係を調べていく。興味深いタンパク質は、内在性タンパク質をノックダウンして、MALMに及ぼす影響を調べる。すでに数種類の候補タンパク質を同定しており、これらの機能解析を進めていく。 本年度の成果として明らかとなったMieap、BNIP3、NIXの3者のミトコンドリア外膜上での会合によって誘導される未知のporeについて、さらに詳細な解析を進めていく。このpore形成に関わる新しい関連分子の同定を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
総額110万円の研究費について、90万円を物品費に、10万円を旅費に、10万円をその他の支出として予定している。90万円の物品費は、先に述べた次年度の実験計画におけるMieap結合タンパク質の同定とその機能解析にかかわる実験試薬・酵素類や細胞培養に要する培地・血清やシャーレなどの消耗品類への支出を予定している。10万円の旅費は、研究成果の発表を行うための国内学会への参加に伴う支出を予定している。さらにその他への10万円の予算は、研究成果の論文発表に伴う支出を予定している。
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Research Products
(10 results)
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[Journal Article] Mieap, a p53-inducible protein, controls mitochondrial quality by repairing or eliminating unhealthy mitochondria.2011
Author(s)
Kitamura N, Nakamura Y, Miyamoto Y, Miyamoto T, Kabu K, Yoshida M, Futamura M, Ichinose S, Arakawa H.
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Journal Title
PLoS ONE
Volume: 6
Pages: e16060
DOI
Peer Reviewed
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