2011 Fiscal Year Annual Research Report
体内の低酸素領域の分布と酸素分圧の定量化に向けた新たなMRI用造影剤の開発
Project/Area Number |
23659197
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
福本 学 東北大学, 加齢医学研究所, 教授 (60156809)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高見 誠一 東北大学, 多元物質科学研究所, 准教授 (40311550)
川上 和義 東北大学, 医学系研究科, 教授 (10253973)
阿部 敬悦 東北大学, 農学研究科, 教授 (50312624)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2012-03-31
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Keywords | 低酸素 / ナノ粒子 / MRI / がん幹細胞 / がん治療 |
Research Abstract |
二人に一人ががんに罹患する時代となって、がん征圧は人類の悲願である。近年、がん組織は一様ながん細胞からなっているのではなく、少数のがん幹細胞と、それから派生するがん細胞からなっていること、がん幹細胞の根絶が治療の成否に関わることが明らかとなってきた。がん組織では正常組織に比べて極端な低酸素の部分が混在し、そこにがん幹細胞が潜在することが特徴であり、虚血によって腫瘍の悪性度の増悪や転移の亢進が起こるとされているが、詳細は不明である。組織の血流を時間的空間的に観察するためにはMRI(magnetic resonance imaging)があるが、小動物用には解像度が十分とは言えない。本研究の目的は、虚血低酸素状態に絞って、詳細な組織の様子を個体に侵襲を加えることなく経時的に観察するMRI用血管造影剤を開発し、その応用を図ることである。毒性の低い鉄がFe3+になると磁性を発現しMRIの造影効果があがると考え、鉄ナノ粒子を合成した。本ナノ粒子は放置すると凝縮してしまうが合成後数日は安定であった。磁性を発現する鉄は還元型のFe3+である。Fe3+を特異的にキレート化し、蛍光を発するようになる蛍光chmosensorlを用いて、培養細胞にナノ粒子を添加し低酸素状態にした。その結果、低酸素化にともなって還元型ナノ粒子が細胞膜に沈着し細胞内に取り込まれること、沈着量は用いる鉄量に比例することを確認した。さらに驚くべきことに取り込まれた鉄は細胞死を誘導することも明らかとなった。放射線や治療抵抗性で問題となる低酸素領域のがん細胞を選択的に攻撃する手段は確立されておらず、我々が開発した鉄ナノ粒子による低酸素細胞を標的としたがん治療法の有効性に対する期待は大きいと言える。
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