2011 Fiscal Year Research-status Report
関節強直を規定する皮膚炎と関節強直の病態連携分子メカニズムの解明
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23659198
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
小野 栄夫 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (20302218)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 強直症 / 皮膚炎 / IL-17 / 疾患モデル / 治療実験 / 抗サイトカイン療法 |
Research Abstract |
本研究では、独自に開発した自然発症強直症モデルマウス(McC-ank)と乾癬性強直症モデルとされるDBA/1マウスを用いた。 我々はこれまでに、病理組織学的にヒト強直性疾患に類似した病態を自然発生するマウスに見出し、強直症モデルとして解析してき。この強直症モデルは、腱付着部炎を初期病変とし、そこから異所性軟骨増殖性病変、軟骨内骨化、そして関節変形・機能障害に至る。また、この強直症は雄のみに発症し、炎症性皮膚病変を常に合併した。さらに当モデルを用いた遺伝連鎖解析を行った結果、第7染色体上のFGFR2遺伝子座をピークとする染色体領域に強直症発症との強い連鎖を同定した。以上の知見から、強直症の発生と1.雄性要因(性ホルモン環境、行動様式、Y染色体)、2.皮膚病変、3.FGFR2遺伝多型との関連性を想定し、2種のマウスを用いて以下のことを明らかにした。(1)McC-ankの実験:雄性要因について明らかにするために、精巣摘出、個別飼育、Y染色体の入れ替え(コンジェニック系統)による影響を観察した。その結果、精巣摘出と個別飼育で強直症発症が顕著に抑制されることが分かった。一方、Y染色体の入れ替えは強直症発症に影響を及ぼさなかった。(2)DBA/1の実験:乾癬様皮膚炎、強直症の発症に相関する血中の炎症メディエーターを調査した結果、血中IL-17の上昇と諸病変の発症が相関することが分かった。そこで、抗IL-17抗体の全身投与予防・治療実験を行った。その結果、抗IL-17抗体の発症前投与、発症後投与いづれの投与法においても、強直症の顕著な改善が認められた。 以上の結果より、強直症の発症の雄性要因として男性ホルモンの重要性、およびDBA/1の強直症発症メディエーターとしてIL-17が重要な役割を果たしていることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
独自に開発した自然発症強直症モデルを用いた解析から、Y染色体コンジェニック系統の樹立とY染色体遺伝的多型の発症への影響は明らかにした。また、外的ならびに内的環境要因として飼育条件や性ホルモンの強直症発症への影響は明らかにすることができた。一方、FGFRII作用が皮膚炎や強直症発症に及ぼす影響については、実証に至らなかった。その理由としては、昨年の東日本大震災の影響でマウス飼育施設の損壊により、系統維持や繁殖が計画通りに進まなかったことが挙げられる。 代替えの実験として、DBA/1マウスを購入し強直症メディエーターの解析を行ってきた。その結果、ヒト強直症の新規治療に繋がる知見を示すことができたことは、想定外ではあるが、従来の目的の一つである治療法の開発に合致するものであるため、本研究は「おおむね順調に進展している」と断定できる。新規モデルを用いて、FGFRIIに関する実験を継続するとともに、IL-17に関する新知見も再検したい。
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Strategy for Future Research Activity |
McC-ankを用いて可溶性FGFR2ならびに抗IL-17抗体による強直症治療実験を実施する。さらに、免疫染色など病理組織学的方法で病変局所の分子発現を明らかにし、皮膚炎と関節病変の連携において、IL-17ならびにFGFRIIリカンドのKGFがどのような作用機序で関わるのかを明らかにする。すなわち、皮膚と関節の各病変部において、固有の炎症メディエーター産生を同定する。 強直症の経時変化の観察より、足根部腫脹の2週間目に足底腱膜直下に著名な間葉系細胞増殖が起こることが判明した。さらに、これらの細胞が軟骨細胞に分化し、最終的に骨化して強直する。骨化の初期に出現する間葉系細胞を培養系に分離し、分子発現などを詳細に明らかにする。 また、KGF-FGFRIIシグナルについて、KGF強制発現による強直症誘発実験を行い、その重要性を検証する。 前年度までに樹立したY染色体コンジェニック系統マウスの病理組織、分子病態を解析する。また、皮膚ならびに関節病変局所からmRNAを採取し、DNAチップによる網羅的遺伝子発現解析を行い、Y染色体のエピスターシス制御に関する理解を蓄積することも考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
病理組織解析として、KGF、FGFRII、IL-17受容体各種に対する抗体を購入する。また、皮膚炎や強直症に相関する血中メディエーターをMcC-ankにおいて明らかにするため、IL-17やKGFの測定用ELISAキットを購入する。また、McC-ankを繁殖し、抗IL-17抗体全身投与による治療実験、可溶性FGFRII(購入可)全身投与による治療実験を実施に当たり、繁殖費用、生物製剤の購入費用に充てる。
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[Journal Article] Indispensable roles of OX40L-derived signal and epistatic genetic effect in immune-mediated pathogenesis of spontaneous pulmonary hypertension.2011
Author(s)
Rabieyousefi M, Soroosh P, Satoh K, Date F, Ishii N, Yamashita M, Oka M, McMurtry IF, Shimokawa H, Nose M, Sugamura K, Ono M.
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Journal Title
BMC Immunol.
Volume: 12
Pages: 67-78
Peer Reviewed
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