2011 Fiscal Year Research-status Report
細菌感染症におけるIL-17/IL-22産生制御機構の解明
Project/Area Number |
23659200
|
Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
岡本 一男 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (00436643)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
Keywords | 免疫学 / 病理学 / 感染症 / サイトカイン / Th17細胞 |
Research Abstract |
新規ヘルパーT細胞サブセット「Th17細胞」は関節リウマチ等の自己免疫疾患や感染防御に対して重要な役割を担っており、またIL-17/IL-22産生性自然免疫系細胞は初期の細菌感染防御に働くことが最近明らかになりつつある。これらの細胞はIL-17とIL-22を産生する点を特徴とするが、IL-17産生機構に関しては解析が進んでいるものの、IL-22産生制御機構に関しては不明な点が多い。そこで本研究では、IL-17とIL-22産生を個別に可視化できるマウスを作製し、感染炎症時におけるIL-17/IL-22産生細胞の制御機構および生理学的機能を解析する。・Il22-RFP, Il17a-GFPノックインマウスの作製:マウスのIl22 遺伝子座にRFP遺伝子を組み込んだ遺伝子改変マウスの作製に向けて、ターゲティングベクターの構築に着手した。またIl17a遺伝子座にGFP遺伝子を組み込んだIl17a-GFP KIマウスは、BIOCYTOGEN社より購入し、現在順調に繁殖が進んでいる。・IL-22産生制御機序の解明:マウスIl22遺伝子プロモーターを用いたレポーターベクターを作製し、既知のTh17細胞特異的転写因子(RORγt、STAT3、Ahr、IκBζ)がIl22遺伝子の転写活性を誘導できるかをレポーターアッセイにより検討した。またIL-6/TGFβ刺激で分化誘導させたTh17細胞(IL-22Low)とIL-6/TGFβ/IL-23刺激で分化誘導させたTh17細胞(IL-22High)からRNAを精製し、IL-23刺激依存的に発現誘導が認められる遺伝子を探索した。 またrVista databaseによりIl22遺伝子近傍のDNA領域上で進化的に保存された転写因子結合配列を同定した。上記の条件より候補遺伝子から選定し、過剰発現・RNAi実験、レポーターアッセイによる検証を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
BIOCYTOGEN社からのIl17a-GFP KIマウスの購入手続きや、当該施設への搬入手続きに時間を費したが、マウスのクリーニング作業も完了し、現在順調に繁殖が進んでいる。またin vitroのヘルパーT細胞分化誘導培養系や組織切片を用いた免疫組織染色解析で、IL-17産生細胞が特異的にGFPタンパク質を発現していることも確認済みである。Il22-RFPノックインマウスのターゲティングベクターの構築作業は少々時間を費やしているが、キメラマウス作製に至る手配は既に進めており、ターゲティングベクターが完成でき次第、早急にマウス作製に着手できる予定である。一方、IL-22遺伝子プロモーターを用いたレポーターベクターの作製は完了しており、およびIL-22発現制御に関わる候補遺伝子のスクリーニングは計画通り順調に進行している。現在、興味深い制御因子をいくつか絞り込んでおり、今後更なる詳細な解析を重ねて、その重要性を確認していく予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
Il22-RFP, Il17a-GFPマウスを用いた黄色ブドウ球菌S. aureusを感染モデルを確立し、マウス組織内のIL-22産生細胞およびIL-17産生細胞動態を、Flowcytrometerおよび免疫組織学手法により、時間的・空間的に解析する。細菌感染に応じて発生するIL-17/IL-22産生細胞の発生経路と細胞特性を明らかにする。さらにCell SorterによりIL-22産生細胞とIL-17産生細胞を分離し、トランスクリプトーム解析およびin vitroにおける機能解析を通じて、細菌感染性のIL-17/IL-22産生性自然免疫系細胞の系統特異的マーカーを選定する。初年度に引き続き、Il22遺伝子発現制御に関わる遺伝子の同定に取り組み、その発現調節メカニズムを明らかにすることで、低分子化合物などを用いたIL-22発現制御法の確立を目指す。平成24年5月より、申請者の所属が東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科から、東京大学医学系研究科に異動となるため、研究実施施設の移動の必要性が生じる。そのため、特にマウスの感染実験に関しては潤滑に実験環境が整えられるかどうか現時点では見通しがたっていない。したがって、当初の計画では複数の細菌感染実験を予定していたが、当面は黄色ブドウ球菌S. aureusの感染実験一種類に集中して解析を行う予定にし、随時実験内容を拡張していく。なお他の実験に関しては、設備環境などの問題は生じていない。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究課題提案書通り、本研究において必要な大型解析機器や組織切片作製装置、細胞培養設備は、当教室ならびに異動後の教室においても既に備えられており使用可能な環境にある。従って、新規に設備備品を購入する計画はない。本研究は大量の実験用マウスを使用するため、次年度においても、実験用マウスの購入や、解析用試薬、特に免疫染色抗体や分子生物学実験用の酵素の購入を計画している。
|
Research Products
(10 results)