2012 Fiscal Year Annual Research Report
革新的ながん治療法の開発―がん細胞の良性化・矯正(リハビリテーション)法の開発
Project/Area Number |
23659206
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
樋野 興夫 順天堂大学, 医学部, 教授 (90127910)
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Keywords | リプログラミング / iPS化 / Tsc変異体 / がん幹細胞 / 遺伝性がん |
Research Abstract |
本研究は、原因遺伝子が明らかとなっている動物のがんをモデルとし、腫瘍細胞のリプログラミングの状態を調べ、原因遺伝子変異や他の異常との関連を調べるシステムを確立することを目指すものである。具体的には、Knudsonの2ヒットが適用される遺伝性腎発がんモデルであるEker (Tsc2) 変異ラットの腫瘍と胎生致死となるホモ変異体胎仔より誘導多能性幹細胞 (iPS細胞) 様の細胞群を樹立し、リプログラミングの様子を野生型iPS細胞と比較すると共に、原因遺伝子 (Tsc2) 導入による腫瘍由来iPS様細胞のリプログラミング状態の変化を明らかにしようとするものである。 我々は、まずラットES細胞の樹立を試み成功した。それらのES様細胞において幹細胞マーカーであるOct4、Sox2、NanogのmRNAが発現していることをRT-PCRにより確認した。さらに、分化培地中における胚様体形成を行い、三胚葉の分化マーカーが発現すること、それに伴う細胞の形態変化が生ずることをRT-PCRや免疫染色により確認した。 次に、Ekerラットのヘテロ変異体同士を交配し、Tsc2ホモ変異体胚盤胞由来のES細胞樹立にも成功した。EkerラットのTsc2ホモ変異体、ヘテロ変異体、野生型胎仔よりES細胞株を樹立に成功した意義は大きい。特に、Tsc2ホモ変異体からのES細胞株の樹立の応用性は高い。 さらに、腎皮膜下への移植に伴う奇形腫の形成に成功した。Tsc2ホモ変異体、ヘテロ変異体、野生型胎仔に由来するES細胞株間における違いを検討した。また、ES細胞群のBrown Norway系統の胚盤胞への細胞注入によりキメララットの作製を試みた。 がん細胞に生じた様々な異常をリプログラムし、人為的に遺伝子発現を制御することを基盤とする治療の可能性を追求することが現実的に可能になってきたと言える。
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