2012 Fiscal Year Annual Research Report
二生類吸虫幼虫の行動制御に関わる感覚センサーの同定と機能解析
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23659209
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
太田 伸生 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (10143611)
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Keywords | マンソン住血吸虫 / セルカリア / 誘引行動 / リノール酸 / 認識センサー / RNA干渉 |
Research Abstract |
年度目標に沿い、セルカリアのセンサー候補分子の分布を調べた。神経受容体が好銀性とする先行研究に基づき、セルカリアを硝酸銀処理後の銀染パターンを観察した。また、硝酸銀処理濃度依存性に幼虫のリノール酸への遊走が抑制されること、及びリノール酸暴露によりセルカリアのATP含量が上昇したことから、これらの銀染色分子がセルカリアのリノール酸感知を通じた遊走活性に関係していると考えられた。しかし、C18不飽和脂肪酸の中でリノール酸は住血吸虫幼虫に対して最も毒性が強く、500μMの暴露で1時間以内に完全に虫体は溶解したが、遊走誘導活性がないステアリン酸は虫体への毒性が観察できない。住血吸虫幼虫が毒性の高い脂肪酸を忌避するのではなく、むしろ遊走標的とする奇妙な現象であった。 さらに、住血吸虫幼虫でのRNA干渉による遺伝子ノックダウンの方法論的検討を進めた。遺伝子発現を抑制したセルカリアを得るためには中間宿主貝に寄生するスポロシストでRNA干渉を機能させる必要があり、soaking法とelectroporation法を比較検討した。前者は全く機能しなかったがelectroporation法は使用電圧が100mVの条件で一定の発現抑制効果が見られ、遺伝子発現抑制セルカリアを得る条件開発に目処が立ったが、当面は尾部を離断したセルカリアでRNA干渉実験を行い、脂質認識に関わるsid遺伝子の関与を解析した。sid遺伝子発現を抑制させて幼虫の脂肪酸取り込みに生ずる影響を検討した結果、sid遺伝子は幼虫の脂肪酸摂取には影響しない結果が得られた。以上の検討から、住血吸虫幼虫の脂肪酸感知センサーは銀染性分子として同定可能であること、セルカリアの遺伝子ノックダウンを可能とするRNA干渉の実験条件確立を通じて、センサーの分子同定のためのアプローチが確立したことなどの成果が得られた。
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