2011 Fiscal Year Research-status Report
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23659235
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Research Institution | Microbial Chemistry Research Foundation |
Principal Investigator |
二瓶 浩一 公益財団法人微生物化学研究会, 微生物化学研究所, 研究員 (40373344)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | RNAウイルス / ウイルス粒子 / ペプチド / 脳移行 |
Research Abstract |
ポリオウイルス(PV)は,中枢神経系に向性を示す一本鎖RNAウイルスであり,小児マヒの原因ウイルスである。ヒトに経口感染後,消化管,局所リンパ小組織,血中を経て中枢神経系に侵入し,神経細胞で増殖することで病原性を示す。PVの体内伝播において,感染(ウイルス複製)はヒトPVレセプター(PVR)の存否で決まり,PV粒子の血液から脳への移行はPVRの有無に関係なく効率的に行われることをPV感受性モデルマウスを用いた我々の研究から証明している。 本研究では,PVの向神経性を示す要因であるウイルス粒子表面ペプチド上のレセプターを認識する機能に着目し,神経性ウイルスの血中から脳移行における基本原理をウイルス側から解明することを目的とする。本年度は1)ポリオウイルス粒子における透過用レセプター結合部位および最少機能単位ペプチドの解析。2)ペプチドマイクロアレイ法を用いたポリオウイルス粒子における透過用レセプター結合部位の解析および透過用レセプターの機能に関与する因子のプロテオーム解析について行った。その成果は、1)ポリオウイルス粒子表面を構成するVP1、2、3の中から宿主レセプターの認識機能にループ構造が関与していることを発見し、その中からVP1のペプチド領域を同定した。この知見に関して、現在、特許出願中である。2)ペプチド合成において塩基性アミノ酸の保護基は立体的にカサ高く、合成効率が低下する。ポリオウイルス粒子ペプチド配列に塩基性アミノ酸が多いことを考慮し、組み換え遺伝子を用いたペプチドライブラリーに切り替えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
生化学的解析および計算機科学的手法より、ポリオウイルス粒子表面を構成するVP1、2、3の中から宿主レセプターの認識機能にループ構造が関与していることを発見し、その中からVP1のペプチド領域を同定した。この知見は、本研究目的の神経性ウイルスの脳移行におけるウイルス側の分子機構の情報を明らかにした結果の一つである。その脳移行への重要なステップである血液脳関門透過は、分子レベルで明らかにされていないが、本知見がブレイクスルーとなることが期待される。 今後、構築したペプチド発現ライブラリーを用いることにより、さらに、ウイルスペプチドのレセプター認識機能における制度が増すものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
脳血管内皮細胞におけるポリオウイルス(PV)粒子の侵入およびトランスサイトーシス経路の解明。 PV研究に用いるマウス脳血管内皮細胞におけるエンドソームの実態はまだ明らかになっていない。それは細胞極性を安定に保つ培養条件等,諸条件が整っていないことに起因する。この細胞を安定に培養および観測を行う条件を確立するのと並行し,PVが感染し,且つ,初期エンドソーム,後期エンドソーム,リサイクリングエンドソーム,ゴルジ体(トランスゴルジネットワーク)およびリソソームを明確に判別することが証明されている培養細胞であるCOS-1細胞を用いて蛍光標識ポリオウイルスのエンドサイトーシス観測系の構築を行う。これをマウス脳血管内皮細胞と比較し,観測系を構築する。観測は,共焦点レーザー顕微鏡,電子顕微鏡等を用いて行う。前年度に設計したPV粒子ペプチドのコントロールとして用いるPVは,精製したウイルスを用いて粒子表面をAlexaFluor-488(-555)でラベル化する。観測に応じ,ウイルス粒子に含まれるRNA分子をSyto82 dye等でラベル化し,観測を行う。エンドソームマーカーRabGTPase類、その他,標的レセプターのクローニングを行い, AcGFP,mCherry,Dronpa-Green、tdTomato等の蛍光タンパク質融合用発現ベクターを用いて脳血管内皮細胞に導入し,PV粒子-標的レセプター複合体の内在化,トランスサイトーシスについて光学顕微鏡観測を行う。共局在の挙動についてFLIP,FRAP,FCS等の技術を導入し,PV侵入に関与するエンドソームまたは輸送小胞について解析を行う。同時に,観測対象の標的遺伝子についてsiRNA等を用いたノックダウンおよび過剰発現等を行い,PV-細胞間の観測システムも構築し,顕微鏡観測を行うことによってトランスサイトーシス経路を解明する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
実験器具と試薬の消耗品費用、学会の出張参加費として用いる予定である。
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Research Products
(3 results)