2011 Fiscal Year Research-status Report
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23659242
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
吉村 昭彦 慶應義塾大学, 医学部, 教授 (90182815)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | ヘルパーT細胞 / サイトカイン / TGFβ / 炎症 / シミュレーション |
Research Abstract |
ヘルパーT細胞は免疫制御の中心を担う細胞である。近年、Th1, Th2以外に多くのサブタイプ(Th17, iTreg等)が存在していることが知られるようになってきた。これらのサブタイプの割合が免疫応答の方向性を決定していると考えられている。しかし、ヘルパーT細胞は、各サブタイプが様々なサイトカインを産生すると共に、様々なサイトカインで分化や増殖が促進されたり抑制されたりするので、各サブタイプへの分化は非常に複雑である。そこで、ヘルパーT細胞各サブタイプへの分化のモデル化を試みた。今回は第一段階のモデルとして、細胞内シグナル伝達系の反応の詳細はモデル化せず、サイトカインの各サブタイプの影響により、Th0から各サブタイプへの分化や各細胞の増殖の反応速度を増加(促進)したり減少(抑制)したりするという簡略化したモデルを用いた。このモデルでサブタイプ相互の関係を明らかにした上で、細胞内シグナル伝達系の反応をモデル化する詳細なモデルの構築を行った。その結果本モデルでは、ある程度Th1,Th2,Th17,iTregそれぞれの分化条件で分化するTh細胞の割合が実験結果と一致することがわかった。そこで次にTGFβの濃度依存性を調べたところTh17は中程度のTGFβでiTregは高濃度のTGFβで効率よく分化誘導されることが予測された。実際にTh17条件化でTGFβの濃度を振ると同様の結果が観察された。一方TCR刺激の強度の依存性を調べたところTh17は強いTCR刺激を必要とすることが予測された。実施に実験を行うとiTregに比べてTh17の誘導には強いTCR刺激が必要であった。これらのことから本モデルはTh分化の挙動を再現していることが示唆された。今後さらに修正を加えて実施のヘルパーT細胞分化を効率よく再現するシミュレーターを構築したい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の最終目標は複雑なヘルパーT細胞分化を状況に応じて予測するシミュレーターを構築することである。本年度はモデルの構築と初歩的な検証実験を行った。その結果TGFβとTCRの濃度についてin-silicoで予想された結果と実験結果が一致した。このことから本モデルの有用性が示された。よって本研究はおおむね順調に推移していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
第一段階のモデルは、サイトカインの効果を簡略化して表しているので、精度が充分ではない。そこで、第二段階のモデルでは、各細胞内のシグナル伝達系パスウエイの化学反応(最終的な転写因子の活性化と誘導)とサイトカイン産生、各細胞種の増殖・分化による変化を併せて計算するモデルを構築する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ウエット実験のための消耗品として全額使用する。
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[Journal Article] Transcription Factor Smad-Independent T Helper 17 Cell Induction by Transforming-Growth Factor-β Is Mediated by Suppression of Eomesodermin.2011
Author(s)
Ichiyama K, Sekiya T, Inoue N, Tamiya T, Kashiwagi I, Kimura A, Morita R, Muto G, Shichita T, Takahashi R, Yoshimura A.
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Journal Title
Immunity
Volume: 34
Pages: 741-754
DOI
Peer Reviewed