2012 Fiscal Year Annual Research Report
救急隊出動から医療機関への搬送に要する時間の地域差と心血管死亡率地域差との関係
Project/Area Number |
23659252
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Research Institution | 新潟県立大学 |
Principal Investigator |
田邊 直仁 新潟県立大学, 人間生活学部, 教授 (40270938)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
齋藤 玲子 新潟大学, 医歯学系, 教授 (30345524)
木村 義成 大阪市立大学, 文学研究科, 准教授 (20570641)
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Keywords | 地域救急医療体制 / 地理情報システム / 脳卒中 / シミュレーション / 死亡率 / 地域格差 |
Research Abstract |
平成23年度には,新潟県新潟市における平成19年4月~平成20年3月の救急隊出動事例(40歳以上)25,713件(昨年度報告から訂正)の発生場所(町丁目レベル),出動救急ステーション,搬送先医療機関,各事例の救急隊所要時間(通報から搬送先到着まで)をGISデータベース化した。平均救急隊所要時間の長さによって22地区を4群に分類した結果,平均救急隊所要時間が長い地区群ほど総死亡,全循環器疾患,全脳卒中,脳梗塞,出血性脳卒中,心不全のSMRが高くなり,不整脈のSMRが低くなる傾向がみられた。 新潟市内で急性心筋梗塞と脳卒中の急性期治療を担当している主要病院各8施設,9施設(治療拠点)を仮想搬送先として設定し,各発生場所から直近の治療拠点まで搬送する推定救急隊所要時間によって22地区を4群に分類した結果では,脳卒中の推定救急隊所要時間(脳卒中所要時間:短い群から,脳Q1,脳Q2,脳Q3,脳Q4)が長くなるほど,全脳卒中,脳梗塞,出血性脳卒中のSMRが高くなる傾向が見られた。 平成24年度には,脳Q4群の地区に脳卒中の治療拠点を1カ所新設した場合の効果をシミュレーションした。新設治療拠点は,公立病院から経営を受け継いだケアミックス型の私立病院に仮設定した。全救急搬送事例を直近の脳卒中治療拠点に搬送すると仮定した場合,新設後には脳Q4群では脳卒中所要時間が平均5分短縮された。さらに,脳卒中救急の実態により近づけるため,脳卒中救急例1043件に限定した分析を加えた。第三次救急医療機関である2病院への搬送例は同じ病院へ,他の事例は直近の脳卒中治療拠点に搬送されると仮定してシミュレーションした。脳卒中治療拠点新設後には脳Q4群の脳卒中所要時間が平均4.5分短縮されてQ3群とほぼ同程度になった。その結果,Q4群の全脳卒中死亡リスクは約20%低減できる可能性が示唆された。
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