2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23659253
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
後藤 由和 金沢大学, 大学病院, 講師 (60282167)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 心停止 / 病院前救護 / 医療社会学 / 地域医療 |
Research Abstract |
近年、北米から報告された救急隊員のための院外心停止傷病者不搬送基準であるBLS基準3項目(救急隊の目撃がない・自己心拍再開がない・除細動が施行されていない)とALS基準5項目(救急隊の目撃がない・自己心拍再開がない・除細動が施行されていない・目撃者がいない・目撃者による心肺蘇生が施行されてない)の本邦における適合性について、既存の資料を用いた観察研究(後ろ向きコーホート研究)を行った。石川県内の二つの3次医療機関に救急搬送された成人心原性心停止を対象(n=520)とした検討では、BLSおよびALS基準の退院時死亡に対する特異度はそれぞれ93.9%、100%、陽性適中率はそれぞれ99.2%、100%であった。本邦の成人心原性心停止を対象(n=289,769)とした検討では、BLSおよびALS基準を適応した場合の心停止後1カ月における神経学的不良好群予測に対する特異度はそれぞれ94.1%、98.1%、陽性適中率はそれぞれ99.8%、99.8%であった。両基準とも適合性は妥当であった。石川県内の救急搬送例および過去5年間にわたる全国規模の院外心停止搬送記録(ウツタイン記録、2005-2009、消防庁から提供)から、成人心原性心停止例に対する北米の不搬送基準の適合性を本邦で初めて評価した研究成果は、極めて意義のあるものと考えられた。本邦では、原則院外心停止例の不搬送は法律で禁じられている。北米の不搬送基準を現時点で適応することは、極めて困難である。しかしながら、今回の観察研究の成果により、限られた条件下ではあるが、院外心停止例における北米の不搬送基準を検証し得たことは、今後の本研究課題の端緒なる重要な成果と考えられ、今後の展開が期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
社会心理学的側面の検証が遅れているが、次年度に予定していた全国規模のデータ解析が進行し、その成果を国内および国際学会の場で発表し得たことから、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
わが国独自の心停止傷病者不搬送基準を作成するためには、消防庁から提供されるウツタイン様式の全国集計調査成績を多面的に解析する必要があると考えられることから、データ数を追加して基準作成を試みたい。その後、作成された判断基準に対する社会心理学的側面を検証したいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当該研究費の効率的使用により、端数が生じたために残額となった。データ収集およびコンピューター入力に対する研究補助員への謝金、論文作成および学会発表に要する経費(英文添削代金・旅費・通信費等)に使用する予定である。
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