2012 Fiscal Year Research-status Report
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23659253
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
後藤 由和 金沢大学, 大学病院, 講師 (60282167)
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Keywords | 心停止 / 病院前救護 / 医療社会学 / 地域医療 |
Research Abstract |
北米から報告された院外心停止者の不搬送基準の本邦における適合性について、昨年度検証を行い、北米基準の単なる本邦の適応では100%の陽性適中率を得られないことが判明した。それゆえ、より信頼性の高い不搬送基準を開発する必要があると考え、本年度は我が国独自の不搬送基準の開発と検証を行った。過去5年間に消防庁が集計している全国規模のウツタイン様式の院外心停止者搬送記録(18歳以上の心肺停止傷病者495,607名)を用いた観察研究(後ろ向きコーホート研究)を行った。主要評価項目は、心肺停止後1カ月の神経学的予後不良群予測に対する陽性適中率と特異度である。開発群(390,577名)における多重ロジステック解析では、自己心拍再開なし、初期心電図が除細動不要、目撃のない心停止が独立した因子であった。これら3基準をすべて満たした場合を不搬送適応とすると、1カ月後の神経学的不良群予測に対する陽性適中率は99.83%、特異度は0.939、受診者動作特性曲線下面積(AUC)は0.922であった。検証群(105,030名)に本基準を用いた場合の神経学的不良群予測に対する陽性適中率、特異度、AUCはそれぞれ99.88%、0.966 、0.942であった。本基準は3項目からなる簡便なもので利便性に優れており、かつ北米基準の陽性適中率を凌駕しており、その有効性が外部検証で示された。しかし、100%の陽性適中率および特異度を持つことは困難であった。すなわち、本新基準を臨床応用する場合は、倫理的問題が重要な課題であると考えられた。国民のコンセンサス・MC体制の強化等諸問題があるものの、わが国独自の院外心停止に対する不搬送基準は、蘇生現場で自己心拍再開なし、初期心電図が除細動不要、目撃のない心停止の3基準をすべて満たした場合とすることが妥当と考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
全国規模のデータ解析が進行し、その成果を国内および国際学会の場で発表し得たことから、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
わが国独自の心停止傷病者不搬送基準を作成するためには、消防庁から提供されるウツタイン様式の全国集計調査成績を多面的に解析する必要があると考えられることから、データ数を追加して基準作成を再度試みたい。また、次年度は研究の最終年度であり、研究総括を行いたいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当該研究費の効率的使用により、端数が生じたため残額となった。データ収集およびコンピューター入力に対する研究補助員への謝金、論文作成および学会発表に要する経費(英文添削代金・旅費・通信費等)および報告書作成費に使用する予定である。
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