2011 Fiscal Year Research-status Report
医療安全文化醸成度の可視的指標の開発と検証に関する研究
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23659260
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
廣瀬 昌博 島根大学, 医学部, 准教授 (30359806)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
今中 雄一 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (10256919)
兼児 敏浩 三重大学, 医学部附属病院, 准教授 (30362346)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | リスクマネジメント / 医療安全文化 / 醸成度 / 可視的指標 / 医療従事者 |
Research Abstract |
自由意志による参加協力病院13病院の職員5,760名に対して、米国政府医療安全機関AHRQ(Agency for Healthcare Research and Quality)により開発された医療安全文化測定調査票の日本版(種田らの邦訳版)によるアンケート調査を実施した。質問項目は、医療安全に関連した意識、態度、環境等についての評価:計44項目で、コミュニケーション、組織の取組・理解、教育・訓練の3領域12因子から構成される。米国のSorraらの報告(2007年382病院、108,621名を対象)と比較して、肯定的回答率について、本調査が上回ったのは、1項目のみで第3因子:イベントの報告される頻度であった。その回答率はSorraらの場合は59.0%、本調査では64.2%で、わが国の医療従事者の勤勉さを表している結果と推測された。しかしながら、他の11因子の肯定的回答率が米国より低いことから、医療安全文化について、わが国は米国と比較し、発展途上にあることが示唆された。一方、A病院では医師44名と看護師2,133名のlag timeは9.14±19.0日および5.19±11.8日、B病院では医師11名と看護師1,495名のlag timeは3.73±5.99日および7.83±7.54日、C病院では医師43名と看護師2,087名のlag timeは4.70±7.62日および0.39±1.83日であった。さらに一般と転倒事例のLag timeについて、B病院では一般事例1,059件と転倒事例599件のlag timeはそれぞれ7.55±7.41日および8.11±7.81日で、C病院では一般1,887件と転倒転落519件で、0.75±2.71日および0.17±0.47日であった。したがって、看護師が医師より医療安全への意識が高く、転倒の方が早く報告されると推測された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の成果について、論文発表を複数行っているとおり、おおむね順調に進展しているものと認識している。医療従事者の意識調査といえる、米国医療安全政府機関AHRQの開発した調査票(日本語版)を用いて、計13病院、5,760名を対象に医療安全文化測定を実施した。また、13病院のうち、7病院からLag timeデータの提供の承諾を得、現時点で3病院が提供に応じている。その結果はA、B、Cの3病院とも医師のLag timeは看護師より長いことが示された。転倒転落事例については、結果がB病院とA病院と一致しなかったが、24年度のデータ追加により、病院数や事例数を増やすことで検討可能と考えられる。24年度も23年度に引き続き医療安全文化測定調査とLag timeデータ収集に注力すると同時に両者の関係や医療安全活動との関係を統計学的に検討する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度において、自由参加の13病院について医療安全に関する米国政府の医療機関AHRQ:Agency for Healthcare Research and Qualityによる調査票の日本語版を用いて、医療従事者の医療安全に対する意識調査をパイロット的に実施した(医療安全文化醸成度の調査)。また、13病院のうち、7病院からLag timeデータの提供の同意が得られている。さらに、平成24年3月末には全国の臨床研修病院約900病院に対し、前述の調査票を用いた医療安全文化測定およびLag timeデータ提供の依頼状を送付しており、現在、約20病院からの了解もしくは問合せが来ている。(Lag timeデータ収集) これら、医療安全文化測定の結果とLag timeの関連性を明らかにすることが本研究の目的であり、両者間の統計学的検索をさらに進める予定である。同時にLag timeデータ収集の際に、インシデントレポート報告件数、各種医療従事者数とその報告件数およびLag time、分類別報告件数とLag time、傷害レベル別報告件数とLag timeならびに医療安全活動の関連項目として、医療安全従事者数、職種、予算、専従・専任、研修会の開催状況等のデータを収集し、医療安全活動状況との関連性をも検討する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上記の計画のうち、医療安全文化測定については、膨大なデータ入力に人員と時間を要することから、24年度は、1)紙ベース調査、および2)Webベース調査の2方式を採用しており、研究協力病院に選択肢を提供している。Webベース調査方式は、アンケート回答と同時にデータが自動保存されるため、人件費が発生しない。一方、紙ベースの場合、人件費が必要なうえ、時間を要することから、24年度における調査対象病院数は最大で20病院程度を想定している。さらに、Lag timeデータの提供において、参加協力病院の担当者がデータ取扱いに不慣れな場合は、本研究チームの研究責任者が直接出向いてデータを受け取る必要が生じる。したがって、すでに平成24年度の助成金使用内訳書を提出し、以下のような使用計画を立てているが、23年度の実績からデータ入力(平均病院職員数443名×20病院)の人件費および旅費(最大で20病院を訪問)に研究費の大部分を使用する可能性があり、物品費および会議や成果発表にともなう旅費は極力差し控える予定である。なお、23年度末に調査依頼を全国臨床研修病院に送付したが、その際、予定の病院数より、送付の病院数が若干少なく、通信費に2,080円の残額があった。この金額を含め、24年度は以下の通り、研究費を執行する予定である。物品費:ソフトウェア、文献購入費、コピー用紙・印刷用紙等計100,000円;旅費:会議にともなう旅費(出雲⇔京都、出雲⇔久留米、出雲⇔津)、データ収集、成果発表(海外)等計500,000円;人件費:データ入力等計100,000円;その他:通信費、印刷費、複写費等;計102,080円 合計802,080円
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Research Products
(2 results)