2011 Fiscal Year Annual Research Report
救急収容要請通話に見られる欠落・冗長・逸脱とそれに対する修正方略
Project/Area Number |
23659267
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
杉本 なおみ 慶應義塾大学, 看護医療学部, 教授 (70288124)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2012-03-31
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Keywords | 医療の質 / 医療コミュニケーション / 救急収容要請 / ホットライン通話分析 / 修正方略 / 内容分析 / 医療者間コミュニケーション |
Research Abstract |
本研究においては、救急収容要請通話において発生する「欠落・冗長・逸脱」を分類し、その背景を考察することを目標に、東京消防庁と慶應義塾大学病院救急科間の救急収容要請通話を録音した。この音声記禄から個人の特定につながる情報を除外した会話内容を筆耕し、「欠落」「冗長」「逸脱」の例とその背景について、談話分析手法を用いて分析を行った。 分析対象とした310通話中、通話が不必要に長くなる「冗長」の原因として、(1)「情報量の少ない語句を用いる(例:「所要にあっては…」)(2)提示順が(医師側から見て)不適切である(3)追加情報を求められたときの反応が鈍い(4)一般語彙を過剰変換する(例:下くちびるの擦り傷→「カコウシンブサッカショウ」)が見受けられた。また、必要な情報が伝達されない「不足」の原因としては、(1)情報収集が完了していない(2)不利な情報(例:路上生活者・精神疾患急性期・外国人)を開示しないがあった。さらに、不正確な情報が非簡潔に伝達される「逸脱」の原因としては、(1)質問の含意が理解できず、字句通りに解釈して答える(例:「既往症は?」「あります」)(2)頻出する会話ペターンとの混同(例:ガラス付着の有無を問われて意識消失の有無を答える)(3)時系列を簡潔・明瞭に説明出来ないの3種類が挙げられた。これらの背景要因としては、(1)応需を得ることの困難さ(2)叱責を恐れる強い心理的制約(3)コミュニケーション教育の欠落が考えられる。 本研究の考察を通して、救急医療を取り巻く厳しい現実が収容要請通話にも影響を及ぼすことが判明した。このような社会的要因の解決には時間を要する一方、用語用法や情報提示順など、コミュニケーション学的教育介入により解決可能な問題点も見つかった。今後は、これらの問題点を精査し、救急隊員・医師双方に対する教育介入内容・方法を検討することが望まれる。
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Research Products
(1 results)