2011 Fiscal Year Research-status Report
癌形質を消失させるマイクロRNA群の薬物応用への試み
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23659285
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
三浦 典正 鳥取大学, 医学部, 准教授 (30325005)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | miRNA |
Research Abstract |
癌を正常細胞化させることはできない。それが常識であった。しかし未分化型肝癌にmiRNA(hsa-mir-520d)を導入すると、約1ヶ月で正常肝組織への形質転換をin vivo検討で確認することができる。このことは当該マイクロRNAの高発現により、肝臓の最も悪性度・転移性・治療抵抗性の未分化型肝癌が現実に正常細胞化するということを意味する。我々はin vitroだけでなくin vivoにおいて山中因子導入で用いられた293FT細胞の幹性化のみならず、未分化型肝癌細胞を幹細胞に形質転換できることを見出したことを受けて、他の未分化型悪性腫瘍の良性化を試みてきた。これらはP53を高発現しつつも多能性マーカーを強発現する特徴を有する。リプログラミングレベルによりin vivoでの効果が異なることを基礎データとして、腫瘍を形成しない方法論の確立を目指して検討している。特にmir-520dはHLF細胞をin vivoで正常肝組織に誘導できたことより、この条件の最適化により安全な誘導方法や治療的手段になり得ると位置づけ、検討を進めている。 本研究費による当該年度での成果としては、全体計画の一部であり、主に単独マイクロRNA発現レンチウイルス量とin vivoで観察される成果の比較検討を行った。メカニズム解析としては、メチレーション関連遺伝子、多能性マーカー、がん抑制遺伝子の共通した発現様式に注目し、その発現様式を新たなベクターを用いた検討を現在も行っている。 多様ながん細胞での解析を行うには未分化維持環境で幹細胞を培養したり、細胞工学的解析を行うためには月40~50万円ほどの費用が発生するため、細胞を肝癌細胞HLFのみに絞り検討を行なった。 成果として、1細胞あたり1コピーの導入により、がん細胞が奇形腫や肝組織にin vivoで誘導可能であることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
がん細胞はたったひとつの細胞から発生することが一般的である。そしてがん細胞はその派生元の細胞に戻ることができる。これが我々の結論である。現象論的には実証できているため、メカニズム解析が必要であり、ほんの糸口になるものでも明らかになるよう検討中である。現象論だけでNatureに投稿したが、メカニズム解析をして再投稿するようにレビューされた。我々はそのための検討を行っている。可能な範囲で少しづつ目的は達成している。昨年中にPCT出願や早期審査出願し、知的財産権は終了した。H24には肝癌の幹性誘導による肝細胞化、良性化に関する現象論に関する発表を国際会議(IHPBA 7月1-5日)で行う予定である。本研究は難治性かつ悪性度の高い未分化癌、低分化癌に共通している現象であると位置づけ、更なる予算獲得を模索している。研究の進み具合はやや遅いが、少しづつ行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
全体計画の概略が以下であるが、この一部を本研究助成で行う。in vitro: mir-520dを用いて以下の検討を行う。多能性マーカー、癌幹細胞マーカー評価、導入後の細胞をタイムラプス撮影、導入細胞の増殖曲線, FACS解析, 分化状態の評価、分化誘導能すなわち幹性獲得の発現解析(トランスクリプト-ム、メタボローム、免疫染色、AP活性)、miRBLASTを用いて520dの各標的遺伝子及び共通標的遺伝子の検索、標的候補遺伝子を証明するためのLuciferase解析, miRNA array及びmircoarray、In vivo導入のための520dのアデノウイルスベクターへのレトロフィット、メチレーション初期化レベルの評価、再生医療への応用を見据えた作製効率の向上、分化誘導(神経、心筋、骨芽細胞、脂肪細胞、膵細胞等)、遺伝子発現プロフィールを転写及び翻訳レベルでの比較検討、新規DDSを目指したexosome及びラクトソ-ムによるin vitro評価in vivo:臨床前試験を実施し、最も導入方法を検討する。GFP陽性感染細胞をxerograftモデルで腫瘍形成能の評価、細胞生物学的多能性評価、標識核酸を用いた薬物動態、毒性評価など臨床薬理学的評価、Exosome (ex vivo)及びアテロコラーゲンやラクトソームをDDSとした実用性の検討4. 多様な癌腫での増殖抑制形態、毒性、催奇形性に関する評価、免疫染色や組織学的評価、アデノウイルスベクターでの有効性評価、を手掛ける。本研究助成ではメカニズム解析を継続して行う。細胞工学的、分子生物学的手法で進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
メカニズム解析のために大部分を消耗品(細胞工学、分子生物学試薬一般)に費やす。miRNAやDDSに関する研究会への参加、学会発表などに旅費として使用する可能性もあるが、H23年度と同様の使用方法になると予想する。また学内の解析委託もH23年度同様に必要となる。
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Research Products
(5 results)