2012 Fiscal Year Research-status Report
癌形質を消失させるマイクロRNA群の薬物応用への試み
Project/Area Number |
23659285
|
Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
三浦 典正 鳥取大学, 医学部, 准教授 (30325005)
|
Keywords | マイクロNRA / 癌 / iPS |
Research Abstract |
癌の正常細胞化に関してその根底にあるメカニズムを解明する試みをした。miR-520dが未分化型癌細胞を容易にiPSに変化させうることから、miR-520dの標的遺伝子が抑制されることで、その効果を発揮すると考えられた。そこでバイオインフォーマティックス(Web上に5種類の利用できるデータベース)を用いて標的遺伝子を予測した。その結果ELAVL2などが候補として浮上したため、ルシフェラーゼレポーター発現アッセイを行い、miR-520dが実際にin vitroでELAVL2の3‘領域に直接結合して、本遺伝子を発現抑制することを突き止めた。 次いで、この抑制された遺伝子を、免疫不全マウス(KSN/Slc)を用いてin vivo検討した。miR-520dと同様の幹性誘導による奇形腫や肝組織が得られることを期待していたが、腫瘍形成をせず、腫瘍自体が消失する結果になる。幹性誘導の証明には至らなかったが、必ずこのマイクロRNAの標的遺伝子群の中に重要な鍵となる遺伝子があると予想する(この標的遺伝子の成果までで論文投稿した)。ELAVL2以外の遺伝子関与を証明するために、その次の候補として、TEAD1やGATAD2Bが挙げられ(知的財産権申請2012年12月)、これらの遺伝子群を用いたin vitro検討を行っている。 ここまでの成果は、平成24年度日本癌学会総会、肝胆膵国際会議、日本臨床薬理学会総会で発表した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
当初の目的は癌細胞の正常細胞化のメカニズム証明であり、創薬開発ではない。学術的検討として、特に治療抵抗性癌細胞ほどiPS化しやすいのではないかということであった。肝癌、膵癌、甲状腺癌、多形性膠芽腫、線維肉腫など未分化型がん細胞株または肉腫細胞株で行い、iPS様細胞への変化を認めたため、当該マイクロRNAは、この現象を誘導するがん化に本質的な生体分子であると認識された。 現在、miR-520dの標的遺伝子のうち、ELAVL2, TEAD1, GATAD2BのsiRNAを用いてin vitroだけでなく、in vivoで幹性誘導をもたらす条件を最適化している。 この2年間、当該科研費(挑戦的萌芽研究基金)の恩恵を受けているけれども、遂行するための資金として、足りないところは他の予算を充当している。効果につく試薬は本助成金では購入できないからである。 目標の1/3は達成していると自己評価している。当初5年間でin vivo検討もメカニズム解析も行う予定であったが、気持ちの続く限り継続していく。
|
Strategy for Future Research Activity |
本miRNAの標的遺伝子としてELAVL2を同定できたことを受け、更なる標的遺伝子の同定とELAVL2の役割を解明しつつ、核酸医薬のみならず阻害薬や抗体医薬の開発も可能となるため、生体応用の製剤化や投与の条件など最適化に従事する。 miR-520d, ELAVL2は未分化癌を発生由来細胞へ回帰させ、悪性形質を喪失させる特徴を持ち、治療へ応用すれば、がん細胞が1細胞に1コピー導入させることができれば、元の細胞へ形質転換する、世界に類を見ない画期的な生体分子である。治療経過中に画像診断上徐々に消失する治療効果を想定している。線維芽細胞、血管内皮細胞、角化細胞、扁平上皮細胞に造腫瘍性を有しないため、がん細胞(癌幹細胞)に劇的な効果が期待できることも重要な特徴である。 今後は、癌細胞の正常細胞化のメカニズム解析とmiR-520dと各種DDSを用いた薬物動態、免疫原性、毒性、悪性腫瘍原性の喪失の確認を行い、ELAVL2の機能解析を徹底して行う。またELAVL2の阻害薬を同定する。1~2年で生体内での安全性の基礎的データを蓄積し、3年後より動物実験の最終評価を、大動物を含めて行う。前臨床試験であるため倫理面での配慮は不要であるが、深い生命尊厳心をもって動物実験を行う。日本発のイノベーションを目指す。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
低分化腫瘍を治癒出来る可能性をもつ生体分子を用いて、前臨床試験レベルの検討までを実施予定とする。 in vitro:ではhsa-miR-520dおよび標的候補遺伝子を用た検討。1.多能性マーカー,癌幹細胞マーカー評価,導入後の細胞をタイムラプス撮影,導入細胞の増殖曲線, FACS解析,分化状態の評価, 2. 分化誘導能すなわち幹性獲得の発現解析(トランスクリプト-ム、メタボローム), 3. 他の標的候補遺伝子を証明するためのルシフェラーゼ解析, miRNA array, Mircoarray, 4. In vivo導入のための520dのアデノウイルスベクターへのレトロフィット, メチレーション初期化レベルの評価、初期化条件の最適化の検討 再生医療への応用を見据えた作製効率の向上、分化誘導(神経、心筋、骨芽細胞、脂肪細胞、膵細胞等)、遺伝子発現プロフィールを転写及び翻訳レベルの比較検討, 5. 新規DDSを目指したexosome及びラクトソ-ムによるin vitro評価, 6. 520dの標的候補遺伝子ELAVL2, TEAD1, GATAD2Bの阻害薬の探索、siRNAや阻害薬を用いたiPS化及び分化誘導検証 他の標的候補遺伝子の阻害薬の探索およびiPS化及び分化誘導検証, 7. iPS細胞へのmiR-520d導入による腫瘍形成抑制化の検討(再生医療への応用) in vivo:臨床前試験を実施し導入方法の検討。1. GFP陽性感染細胞をxenograftモデルで腫瘍形成能の評価、細胞生物学的多能性評価 , 2. 標識核酸を用いた薬物動態、毒性評価など臨床薬理学的評価, 3. Exosome(ex vivo)及びアテロコラーゲンやラクトソームをDDSとした実用性(治療的効果、予防的効果)の検討 , 4. 多様な癌腫での増殖抑制形態、毒性、催奇形性に関する評価, 免疫組織学的評価
|
Research Products
(8 results)