2011 Fiscal Year Research-status Report
転写因子NF-κBハイスループット検査システム構築による救急医療への応用
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23659294
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
北島 勲 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 教授 (50214797)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
仁井見 英樹 富山大学, 大学病院, 助教 (50401865)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 転写因子 / ハイスループット検査 / NF-kB活性化 / 蛍光相関分光法 / 病院検査室 / 炎症反応 |
Research Abstract |
蛍光相関分光法(FCS)測定に影響を与える粘性の影響を排除するため、NF-kBと強い結合能を有するwild-type competitor(WT)とNF-kBと結合しないnon-specific competitor (NS)を作成した。TNFα非刺激下のHeLa細胞核抽出物ではFCS拡散時間は600μ秒であったが、TNF刺激後では拡散時間延長(735.4μ秒)が認められた。さらに、この核抽出物にWTを過剰量添加すると拡散時間はフリープローブのみと同等まで拡散時間が回復した(590μ秒)。一方、NS過剰量添加では、プローブとNF-kB間に結合の影響が認められなかった。本競合プローブを用いることにより粘性の影響が排除でき、核抽出物中の拡散時間からプローブとの結合率を算出することで、核内へ移動したNF-kB量が定量化できることが示唆できた。次に、U937細胞核抽出物10μgに対してヒトリコンビナント(hr)NF-kBp50(0.8 ng)を添加し、結合率を解析した。WT過剰添加における結合率は3.6%でNF-kBと異なる非特異的結合の存在が明らかになった。一方、NS過剰添加した結合率は27%を示し、これは添加したhr-p50とプローブの結合と非特異的結合の影響の両者を加えた値である。これらを基に検量線を作成し、NS溶液における定量値からWT溶液における定量値を引き、hr-p50/プローブ複合体定量値を求めると0.67ngで、回収率は89%であった。以上、添加回収試験の変動係数は10%であることを確認した。本法の測定値が、NF-kB活性化を反映しているのか確認するため、NF-kB核内移行阻害薬BAY117082処理後に細胞刺激すると、BAY117082添加濃度に応じて拡散時間は短縮した。すなわち、本法で算出される拡散時間は、NF-kB活性化量を適切に捉えていることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度の実験計画では、1)全血よりリンパ球・白血球分離と核蛋白の迅速・簡便な抽出法開発、2)FCSを基盤にした生物試料中からの特異的なNF-κB活性化測定法確立を到達目標と設定して研究を実施した。1)全血から溶血剤にて赤血球のみ可溶後、白血球吸収フィルターで膜にリンパ球を分離回収する方法を検討し作用時間は約2分と迅速性を実現したがフィルター膜が高価でありコストパーフォマンスが悪いため、現時点では本方法の採用は困難であり、従来のフィコールによる遠心分離による白血球分離後、NP40添加後高塩処理による核蛋白抽出法を採用することにした、2)FCS法によるNF-κB定量測定法の課題であった粘度を一定にした測定法として、競合プローブ法を新たに開発して特異性を担保し、2標識表示計算より定量化する方法を確立した。蛍光標識プローブに対する非標識競合プローブと非標識非競合プローブの適正混合比を確定して測定方法のマニュアル化を整備し汎用化することに成功した。現在の問題点は、検量線を設定するためのリコンビナントNF-κBp50を購入しているが会社によるロット差が存在し安定性が低いことで検量線が安定しない点である。以上、平成23年度に到達目標としていた課題はほぼクリアでき、達成度は90%以上であり順調に研究が遂行されていると自己評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
研究課題である迅速性と大量検体処理ができNF-κB活性化測定のハイスループット化と臨床応用(臨床検体と臨床症例による測定)とくにNF-κB活性化と病態との関連性の解明を今後の進行課題とする。汎用性を考慮した場合、DNAプローブをプレートに固相化し、NF-κB抗体で検出するELISA法が臨床検体で利用可能か検討する。とくに最近作成された化学発光法では高感度化が実現されているので、FCS法と比較検討する必要があるが、この検討は平成23年度で試行し結論を得る予定であったが、FCS測定系確立に時間を要したため、ELISA系との比較検討まで至らなかったためELISAkit購入予定金額約38万円が未使用金額として残った。この検討は平成24年度早期に実施する計画である。追試検討をELISA法と比較して行い、本検査法の有用性を明らかにしてゆく計画である。臨床検体での検討では、まず健常者のリンパ球核蛋白中に存在するNF-κB量の基準範囲を設定する。その対比として、CRPなど炎症マーカーの上昇がない肥満者、未治療高血圧患者、メタボリックシンドローム患者でのリンパ球中のNF-κB量の測定、さらに手術侵襲や阻血再灌流時などのストレス下におけるNF-κB量の測定を行う計画である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費予算は、平成24年度直接経費110万円に平成23年度未使用額38万円を加えた148万円を使用込み額として、研究費使用計画を以下のように立てた。1)われわれが今回開発したFCS法とDNAプローブをプレートに固相化しNF-κB抗体で検出する既存のELISA法のどちらが臨床検体で利用可能かその精度(感度・特異度)とコスト面、迅速性、ハイスループット性能につき検討する。〔消耗品〕FCS測定用試薬(10万円)、NF-κB測定用ELISAキット(15万円x2回=30万)、NF-κB関連抗体10万円2)臨床研究(健常者のリンパ球核蛋白中NF-κB量基準範囲設定。炎症マーカーの上昇がない肥満者、未治療高血圧患者、メタボリックシンドローム患者のリンパ球核内NF-κB量測定、手術侵襲や阻血再灌流時などのストレス下におけるNF-κB量測定、NF-κBとの関連性を検討するために、他の検査マーカーとしてCRP,IL-6、IL-8,IL-18等のサイトカイン測定を行う。〔消耗品〕リンパ球核蛋白抽出検討試薬5万円、サイトカイン測定ELISA(10万円x2=20万円) 3)旅費(1)研究打ち合わせ:確立したFCSを用いたNF-κB測定法のより高精度化を目指した研究経費:共同研究企業であるシスメックス社BMAラボラトリー(神戸)との研究打ち合わせ旅費(富山―神戸間1回1人5万円x1回=5万円)(2)学会発表旅費:外国旅費:アメリカAACC(アメリカ臨床病理年大会、7月ロサンゼルス1名30万円、国内学会発表:臨床検査自動化学会春季大会(4月高知:1名5万円)、日本内科学会総会(4月京都:1名5万円)、臨床化学学術集会(9月岩手市)5万円x2名=10万円、4)論文作成用経費、別刷代金として8万円計上5)共同研究者:富山大学附属病院 仁井見英樹先生へ分担金10万円、以上、148万円を平成24年度に計上する。
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Research Products
(4 results)