2011 Fiscal Year Research-status Report
エイズウイルスの変異と薬剤耐性を識別する検査法の開発
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23659302
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
甲斐 雅亮 長崎大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (00160953)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | エイズ / HIV / 変異 / 薬剤耐性 / プロテアーゼ / 基質特異性 / 蛍光反応 / ペプチド |
Research Abstract |
エイズの原因であるHIVは、ウイルスの複製に必要なHIVプロテアーゼ(HIV-PR)や逆転写酵素など独自の酵素を持っており、これら酵素を標的とした阻害剤がエイズ治療薬として臨床応用されている。しかし、HIVゲノムは容易に変異を起こし、特に、HIVプロテアーゼ遺伝子における変異は、薬剤耐性と密接に関係している。このため、変異によって薬剤耐性を獲得したウイルスを識別する検査法は、エイズ治療だけでなく、新規治療薬の開発においても重要である。この検査法を開発するために、申請者が見出したペプチドに選択的な蛍光誘導体化反応とHPLCを組み合わせた、HIV-PR活性測定法を開発した。 まず、HIV-PRの基質として4種類のN末端アセチル化ペプチドを合成した。また、HIV-PRが発現している大腸菌の抽出液を酵素溶液として使用した。酵素溶液とそれぞれの基質を反応させた後、蛍光誘導体化反応を行い、HPLCおよび蛍光スペクトロメーターによって蛍光検出した。その結果、Ac-SGIFLETSを基質として使用した場合、HPLCにおいてLETSに相当するピークが観察された。このとき、基質を使用しなかったブランクでは、ピークが観察されなかった。また、蛍光スペクトロメーターにおいても、ブランクと比較して、蛍光強度の増大が観察された。今回使用した酵素溶液には、HIV-PR以外にも、多数の大腸菌由来の酵素が含まれているため、これらの結果は、本法が特異的にHIV-PRを測定できることを示している。また、HPLCを用いることで、HIV-PRによって分解されたペプチド(LETS)が、分離・検出できたことから、本法は、複数の基質ペプチドを同時に使用できることを示している。 目的とする検査法は、複数の基質を使用し、基質特異性の違いを利用して、変異型HIV-PRを識別するため、現在、別の基質ペプチドを設計中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在、HIV-Iプロテアーゼ遺伝子を大腸菌に組み込み、発現させることに成功している。3種類のプラスミドを用いて発現HIV-Iプロテアーゼの酵素活性の最適反応条件について検討した結果、ペプチドに選択的な蛍光誘導体化反応とHPLCを組み合わせることで、特異的なHIVプロテアーゼの新規活性測定法を開発した。今後、基質となるペプチドの種類を増やすことで、目的とする変異型HIV識別法の開発が期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
HIVプロテアーゼの基質となるペプチドを新たに設計・合成する。また、変異型HIVプロテアーゼの作製とその基質特異性を調べ、基質特異性の違いを基にした変異ウイルス識別法を開発する。 手法として、マイクロチップ電気泳動装置を用いて、数分以内にHIVプロテアーゼによって生成されたペプチド断片を分離検出できる手法を開発し、これにより、実用的なHIVプロテアーゼ活性測定法を開発する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度への繰り越しは、今年度の研究成果を学会発表するための費用として使用する。次年度の研究費は、当初の計画通り、消耗品費、旅費、謝金等に使用する予定である。
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Research Products
(20 results)