2012 Fiscal Year Research-status Report
難治性気胸に対する音響学的診断と非侵襲的治療の開発
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23659307
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
鈴木 隆 昭和大学, 医学部, 教授 (60118958)
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Keywords | 自然気胸 / 肺音 / フーリエ解析 / ブラ / ブレブ / 続発性気胸 |
Research Abstract |
研究が気胸を有する症例に対する肺音の解析であることから、最初に基礎実験として肺音の採取、記録に関する手技の確立を試みた。すなわち聴診器システムを用いて肺音(呼吸音、副雑音)の採取、記録を行った。まず市販のボイスレコーダー付き聴診システムを試したがこれでは採取した音の記録の中のノイズが強いことが判明した。さらにその聴診システムでは記録した肺音の強度が低くフーリエ解析ソフトで周波数解析には不適切であった。そこで自作の聴診器、記録装置を作製することにした。周囲のノイズを遮断するためにいろいろな素材を試したが最終的には厚ゴム(大型机の脚にはめる滑り止めのゴムのキャップを利用)による聴診器を作製した。このキャップの開放部を胸壁に強くあてれば周囲の雑音を減弱することができた。キャップの閉塞側に細い穴を開けてエレクトレットマイクロフォンを挿入固定しさらに音が入らぬようにマイクロフォン周囲を密封した。ボイスレコーダーは市販されているソニー社製のものを使用しWAVの様式で記録している。現在は入院症例ごとの記録を蓄えているが、自然気胸症例では入院時、胸腔ドレナージ施行後、気胸の治癒後の肺音を採取、記録する作業を行う。 これらの音をコンピュータへインストールした音響解析ソフトで周波数解析し、自然気胸のブレブから発生する空気漏れの音を解析する予定である。先に記したように市販の聴診器システムには解析ソフトが付属しているがこれは同システム以外の聴診器で採集した肺音の解析には使用できないことが判明している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
平成23年2月に研究費を申請した時の勤務病院から現勤務病院へ異動になり、診療科内での仕事の内容に若干の変化があった。そのため研究対象としていた気胸症例の診療の機会が一時的に減少することになった。しかし徐々に臨床体制を整えて気胸の全診療過程に参画することができるようになったので現在研究は再開している。また前の病院の血液センターで行うことができた自己血からのフィブリン糊の作成が新勤務地ではできなくなったために当初申請していた後半の研究は不可能な状況が続いている。 さらに当初肺音の収集、記録、解析に使用を予定していた市販の聴診器システムを購入し約1年間音の採取、記録を行ったが、音を解析する段になってこの記録が解析に耐えないことが判明した。すなわちノイズが多く肺音の強度のレベルが低かったため音響解析を行うことができなかった。そこで自作の聴診器システムから開発することになった。臨床で用いている聴診器のチューブにマイクロフォンを挿入して録音するとノイズが多すぎたため新たに聴診器を作成する必要が生じたため時間を要した。またマイクロフォン、ボイスレコーダーの選定にも時間を要している。別な経費で購入したボイスレコーダーであるが故障してしまいデータが失われてしまった。さらに音響解析のソフトも当初は先の市販の聴診器システムに備わったものの使用を予定していたが、このソフトは別な聴診システムからの音声の入力の解析を行うことができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
研究期間を延長する次年度は病院内において気胸症例の全経過の診療の機会を再度増加させたので、研究対象症例が増加することが期待される。特に外来で気胸を診療しその治療法の決定に参画する機会を増やした。気胸は症例によっては入院、ドレナージ、さらには手術が必要になることがあるが、全経過で肺音を記録することができるようになった。以上のような環境づくりによりデータを短期間に数多く蓄積できるようになっている。 さらに自作の聴診システムを確立しつつある。すなわち市販の聴診器システムが期待したほどには肺音の記録、解析に適していないことが判明したので、自力で聴診システム、記録システム、解析システムを開発する必要が生じた。聴診器および録音システムは試行錯誤ののちほぼ完成しすでに肺音の採集、記録に使用しているが、音響解析システムがまだうまく作動していない。先に購入した市販の聴診器システムの解析ソフトは使用できないことが明らかになっている。そこで一応、音響解析ソフトを他の研究者から提供を受けており、これを蓄えつつあるデータの解析に使用する予定である。これ以外にも有料の解析ソフトの購入使用を検討している。しかしもしこれらの解析ソフトが解析に適していない場合には有料で音響メーカーに解析を依頼することも視野に入れている。そのために本研究の申請時にすでに音響メーカーの担当者に肺音の解析が有料で可能なことを打診してある。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は記録した肺音の解析を積極的に行う。肺音は以前に別な経費で購入したボイスレコーダーにWAVの様式で保存してあるが、これが故障したトラブルを経験しており次回故障の際にはさらに同じソニーの製品を購入する必要がある。また先の推進方策にも記したように音響解析ソフトの購入の経費を予定している。さらに購入した解析ソフトがうまく作動しない場合に備えて音響メーカーに有料での解析を依頼することも考えている。当院の近隣には工業製品の品質管理に異常音の解析を行っているメーカーが複数あり、本研究の申請時にこれらの会社の担当者に肺音の解析が有料で可能なことをすでに打診してある。 肺音のWAV様式のデータの保存にはハードディスクを使用しこれを持ち歩くのにはUSBメモリを用いるための経費を考えている。 研究成果は複数の論文にする予定であり、医学雑誌への掲載料が必要である。また国内外の研究会、学会で発表の予定でありそのための学会の参加費、旅費を見込んでいる。ことに外国雑誌への投稿あるいは海外での発表の際には有料で英文のチェックをうけることを予定しておりその経費を考えている。さらに英語の発表でネイティブスピーカーの音声入力が必要な場合も想定しその経費も考慮している。また学会の発表の際にもちいるプレゼンテーションのソフトが必要であり、発表形式によっては動画、音声を用いることがあるため動画・音声編集ソフトの購入も検討している。
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