2011 Fiscal Year Research-status Report
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23659309
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
小野 真一 日本大学, 薬学部, 教授 (20246862)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 裕 日本大学, 医学部, 准教授 (10287625)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 銅イオン / 筋萎縮性側索硬化症 / バイオマーカー |
Research Abstract |
G93A SOD1変異マウスに加え、G127X、G85R、D90Aの4系統のヒトSOD1変異を有するトランスジェニックマウス(Tg-マウス)を対象とした。ここで、G93AとD90A SOD1変異マウスはオリジナルのSOD1活性が保たれ、銅イオン結合能が保持されているがG127XとG85RではSOD1活性は低下し、銅イオン結合能も低下している。wild type(WT)を各SOD1変異マウスの対照に、C57BL/6JをヒトSOD1を有するTg-マウスの対照とした。脊髄の銅イオン濃度は誘導結合プラズマ法で測定した。 各マウス脊髄の銅イオン濃度はC57BL/6J 1.13±0.04、WT 1.83、G93A 2.19±0.31、G127X 1.53±0.13、G85R 1.81±0.21、D90A 2.24±0.13 (いづれもmean±SD、μg/g wet tissue)で、WTを含めたヒトSOD1変異を有する各Tg-マウス有意に増加していた(p < 0.05; ANOVA and Tukey's post-hoc test)。銅イオン濃度の増加は、SOD1活性の低下しているG127XとG85Rよりも活性が保たれているG93AとD90Aで顕著であった。 我々はG93A SOD1変異マウスにおいて細胞内銅イオン代謝異常の存在と細胞内銅イオン除去による治療効果を報告しているが(J Neurochem 111: 181-191, 2009、 Exp Neurol 213: 122-128, 2008)、本研究から細胞内銅イオン代謝異常はG93 SOD1変異に限った現象でなく、多くのSOD1変異に共通する代謝異常であり、銅イオンがSOD1変異を有するALSのバイオマーカーであることが示唆される。銅イオン除去はSOD1変異を有する筋萎縮性側索硬化症の治療に広く応用できる可能性が有る。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初は、SOD1変異の1つであるG93A変異を有するマウスから得られた細胞内銅代謝異常という現象が、ヒト孤発例に適用できないかを目論んだ。しかし、ヒト剖検例が集まらなかったことからヒト孤発例への適用は断念せざるを得なかった。 しかしそれに代わり、G93A以外のSOD1変異を有するマウスを用いることで、細胞内銅代謝異常はG93A SOD1変異に限局した特殊な病態ではなく、広くSOD1変異に共通する病態で有ることを明らかにできた。銅イオンがSOD1変異を有するALSのバイオマーカー足り得ることを明らかにした点を鑑みれば、概ね順調に進展していると思われる。また、細胞内銅代謝異常の是正が広くSOD1変異を有するALSの治療標的となり得ることを支持し、治療への道筋を開くという点でも有意義な結果と考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
ヒト剖検検体は今後も得られそうにないこと、G93A以外のSOD1変異を有する マウスを用い、良い結果が得られたので、来年度はこの延長線上の研究推進方策をとる。 銅イオン以外の微量元素、すなわち亜鉛、マンガン、マグネシウム等についても検討を行う。 細胞内の銅イオンはSteap2により還元され、Ctr1により細胞内へとりこまれる。とりこまれた銅イオンはAtox1等により細胞内で目的のオルガネラに輸送され利用される。細胞内の銅イオン排出はAtp7aによっている。そこでC57BL/6JとWT SOD1マウスを対照に、G127X、G85R、D90A、G93Aの各SOD1変異マウスに於いてこれら細胞内銅イオン代謝に関わるたん白質群の挙動について検索する。さらにこれらのたん白質群が銅イオンと相互作用をするためには、グルタレドキシン(Grx)の存在が重要であることが報告されてきた。細胞内銅イオン代謝異常の背景にGrxが関与する可能性についても検討する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
13th Asian Oceanian Congress of Neurology(2012年6月@Merbourne、Australia)ないしは23th International Symposium on ALS/MND(2012年12月@Chicago、USA)での発表を考えている。渡航費、宿泊費と学会登録費で25万前後。 論文校正、別刷り等に関わる費用で数万。 銅イオン代謝に関わるたん白質(5~6種類)の抗体に掛かる消耗品代として20万前後が見込まれる。
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Research Products
(6 results)