2011 Fiscal Year Research-status Report
脆弱な抗原性を示す細胞表面新奇自己抗原の解析と新たな自己抗体検査法の開発
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23659312
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Research Institution | Fujita Health University |
Principal Investigator |
三浦 惠二 藤田保健衛生大学, 総合医科学研究所, 助教 (20199946)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 自己免疫疾患 / 自己抗原 / 自己抗体 / 細胞表面抗原 / ELISA / 臨床検査 |
Research Abstract |
本研究の最終的な目標は、新たな自己抗体検査法の実用化である。細胞膜表面に存在するタンパクだけを抗原としてELISAウェルに固相化し、自己免疫疾患患者血清中に存在する抗細胞表面抗体を高感度に検出する新たな測定系CSP-ELISA法を開発してきたが、細胞の破砕法や膜タンパクの可溶化の条件などをさらに検討することにより、安定な測定系を確立することができた。現在臨床検査で用いられている自己抗体検査法は、自己抗原が可溶性のタンパクが主であり、抗原の立体構造も比較的安定なものが多いと考えられる。しかし、CSP-ELISA法では、立体構造が不安定な膜タンパクを標的とする自己抗体を検出することが可能になった。126名の自己免疫疾患患者について測定したところ、全身性エリテマトーデス(SLE)、混合性結合組織病(MCTD)、全身性強皮症(SSc)などで高率(56-81%)に陽性を示した。健常人については、122名の測定から設定したカットオフ値(0.26)以上となる人が4名見つかり、陽性率は3.3%であった。SLE, MCTD, SScとの診断を受けていながら、自己抗体価には高低があることから、今後は臨床医も加わり、患者の病態との関連を見つけたいと考えている。 CSP-ELISA法での検出条件を基に、患者血清を用いた免疫沈降法で、自己抗原の精製を試みた。細胞表面タンパクをビオチン化したものを可溶化し、免疫沈降法で回収された自己抗原を、SDS-PAGEで分離後、ビオチンを検出することで細胞表面に存在していたことが確認できた。患者血清特異的に検出されるバンドが回収され、銀染色で検出したバンドを切り出し、質量分析にかけたところ、細胞表面、あるいは細胞膜に存在するタンパクが同定されてきた。今後、追試するとともに、それらの遺伝子を用いた発現系を構築し、細胞表面上の未知の自己抗原の同定を試みる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
CSP-ELISA法の確立は順調に進み、今後はその利用範囲を広げて、いろいろな疾患において試す段階に入ることができた。これまでの自己抗体検査法にはない新たな方法であり、いろいろな自己免疫疾患に対応できる可能性もあることから、現在論文に投稿し、さらに特許申請の準備を行なっている。 一方、新奇自己抗原の同定については、期待した結果までは得られていない。患者血清を用いた免疫沈降法による自己抗原の精製までは、うまくいっていると判断している。しかし、それら抗原を同定するための質量分析の過程に問題があると考えている。それは、銀染色で検出しているバンドの濃さに比べて、得られているペプチド断片が少なく、頻繁に混入してくるケラチンなどの断片が多いことである。即ち、バンドとして見えているものの一部、場合によっては、大事な標的抗原の情報が得られていない可能性もあると考えている。今後は質量分析の専門家にもアドバイスを受け、対策を考えていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
CSP-ELISA法では、健常人での陽性率は3.3%であるのに対し、SLE, MCTDでは約80%が陽性になっている。しかし、陽性との判定でも、患者において抗体価に大きな差が出ている。これは何を意味しているのか?仮に病態に直結する自己抗体が存在するのであれば、高値である患者と低値である患者との間には、何らかの症状の違いがあるはずである。もしそれが特定できれば、病状把握のための検査に繋がる可能性がある。そこで、本学大学病院に入院し、日々経過観察をしている患者において、抗体価の測定と臨床医の診察から、その関連を探ろうとしている。 細胞表面上の新たな自己抗原の同定を試みる一方、確立できたCSP-ELISA法を用いて、いろいろな疾患患者血清について測定を行うことも、新たな発見に繋がることが期待できる。本研究で対象になっている抗内皮細胞抗体(AECA)は、自己免疫疾患だけでなく感染症や糖尿病、臓器移植の拒絶などにおいても検出されている。さらに最近では、精神神経疾患患者や不定愁訴の患者血清中にも自己抗体が検出されていることから、抗細胞表面抗体の幅広い測定にも意味があると考えている。多くの疾患を対象にするためには、その患者、そして診察している臨床医の協力が欠かせず、また個々に倫理審査委員会での承認が必要になるため、多くの患者および臨床医への説明と理解を求める努力の必要があると考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1.CSP-ELISAの測定のためには、臍帯静脈血管内皮細胞(HUVEC)を始め各種培養細胞を培養し、その細胞表面タンパクをビオチン化して抽出してくる必要がある。その調製のために、細胞培養器具、培地、血清、各種試薬、そしてELISA用のイムノプレートなどを購入する。2.新奇自己抗原の同定には、抗原の精製のためにProtein G Dynabeads、タンパク分離・検出用の各種試薬、そして最終的には、質量分析の費用が必要となる。3.現在論文を投稿中であるが、受理された場合は、出版費用、さらにインターネット上での公開のための費用を予定している。4.論文投稿に際し、英文校閲の費用を予定している。
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