2012 Fiscal Year Research-status Report
新規蛍光増強法ImpacTagの開発と超高感度イムノクロマト診断への応用
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23659314
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute of Medical Science |
Principal Investigator |
芝崎 太 公益財団法人東京都医学総合研究所, ゲノム医科学研究分野, 参事研究員 (90300954)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
櫻井 陽 公益財団法人東京都医学総合研究所, ゲノム医科学研究分野, 研究員 (40546628)
遠藤 典子(岩田典子) 公益財団法人東京都医学総合研究所, ゲノム医科学研究分野, 研究員 (80546630)
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Keywords | 診断 / イムノクロマト / 鳥インフルエンザ / H5N1 / 子宮頸がん / ワクチン |
Research Abstract |
高齢化社会を迎えた現在、医療費の削減や患者のQOL向上実現のために、疾患を早期に診断し、的確な薬効予測に基づく投薬で早期に完治する予防的治療の確立が重要である。各種疾患の的確な診断法開発のためには、次世代の汎用的診断技術として「蛋白バイオマーカーの同時多項目分析技術」および「迅速簡易測定技術」の臨床診断への応用が急がれている。そこで本研究は、新しいイムノクロマト診断法及びデバイス作製し、①緊急性を有する鳥インフルエンザの亜型識別(H5N1)と、②社会的認知度が近年上昇している子宮頸癌予防ワクチンの中和抗体検出(タイプ16型、18型)も含めた超高感度イムノクロマト法(従来法の1,000倍以上の感度)の確立をめざす研究であり、最終的には外来・屋外いずれでも実施可能な場所を問わない多項目診断が可能な完成度を達成目標に設定した。 まず、鳥インフルエンザの亜型識別(H5N1)に対しては、新たな抗体作製を行った。また、子宮頸癌予防ワクチンの中和抗体検出(タイプ16型、18型)のためには、それぞれパピローマウイルスの16型、18型のL1抗原の人工発現系確立を行った。それに伴って、検出系の確立、および測定機器の共同開発を行った。 結論としては、MUSTag法の応用であるIMPACTagでは、蛍光強度を2-3倍程度増強できたが、理論的な予想の10倍までは届かず残念せざるをえなかった。但し、蛍光イムノクロマト法の開発を平行して行った結果、従来よりも100倍高感度なイムノクロマトチップと測定機器が完成した。また、子宮頸がんの抗原であるL1蛋白も、カイコの系で大量発現系が完成し、この抗原を用いた磁気ビーズELISAとイムノクロマト法は、MUSTagを使用するまでもなく高感度なアッセイ系が完成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画していた蛍光増強法であるIMPACTagの応用は、蛍光強度が理論値に達せず、またイムノクロマト法で使用した場合、抗体に遺伝子DNAが付加され分子量が多くなったため、目詰まりが起こり使用できなかった。これ等の困難を克服するため急遽、開発の方向を蛍光標識使用に切り替え、検出器の開発で高感度化する方向性を取った。幸にも、これらの機器開発が企業との連携で順調に進んだこと、および困難を予想していたH5N1抗体の取得も順調にいき、またパピローマウイルスのL1抗原の発現系においても、カイコでの発現系を使用する事で大量発現が実現できた。これらの開発の中で、一般的な測定法に加え、当初から目的としていた簡易診断法であるイムノクロマト法の開発の目的がほぼ達成できた。H5N1のトリインフルエンザ検出系では、H5N1に加え季節性ABに対して、蛍光イムノクロマト法による15分、従来より10倍高感度な測定系の完成。子宮頸がんワクチン効果判定では、磁気ビーズ系ELISAと簡易金コロイドイムノクロマトが完成した。本年度、AB型インフルエンザで臨床試験開始、H5に関してはクロス反応を全亜型ウイルスで施行した。子宮頸がんワクチン効果判定では、100例以上のワクチン接種者、健常者での測定を行い、完成した系が十分に今後の臨床試験に耐えうる性能を持っていることが判明した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで開発して来たインフルエンザ検出系、子宮頸がんワクチン効果測定系の両者とも、今後の販売に関する性能を十分持つことが明らかとなった。子宮頸がんでは、さらに症例を増やし、本キットによるワクチンの効果判定の意義を明確にすることが重要である。そのためにもさらに症例を増やした検討を予定している。 一方、インフルエンザの高感度イムノクロマト法は、蛍光色素を用いており、測定機器も卓上型とは言え、コストも高く普及にはまだ多くの障壁がある。このため検出器が安くハンディータイプにまで小型化できる発光法を用いた方式を採用すべきと考えている。発光法では、従来型の携帯カメラ程度の検出系で読み取りが可能であり、今後の高感度イムノクロマト法を考えた場合には圧倒的に有利となる。但し、イムノクロマトチップはこれまでに発光法の原理を使用したものはなく、新たな開発が必要である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今後、新たな発光法を用いた高感度イムノクロマト法を開発する事を目的に、以下の予備実験を行う。 ①イムノクロマトに適した発光酵素の選択:発光法に使用する酵素はアルカリフォスファターゼやHRPが代表的である。抗体へのこれらの標識により、イムノクロマト膜での流れが悪くなることが予想されるため、膜のporeサイズの検定、標識酵素量等も検討する必要がある。 ②発光基質の選別:安価で特許侵害しない基質が条件。また高感度検出系に使用される基質の種類も最近はかなり多い。イムノクロマト法でのこれらの基質の最適な条件を検討する。 ③過酸化水素を使用する際の保存性の検討、また同時に過酸化水素に代わる発光方式の検討。
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