2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23659316
|
Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
倉石 泰 富山大学, 大学院医学薬学研究部(薬学), 教授 (80111970)
|
Keywords | 痒み / 鎮痛薬 / バイオマーカー / PAR2受容体 / 血清中因子 / グランザイムA / ACTH |
Research Abstract |
痒みは,ヒトでは一般的に視覚的アナログ尺度による自覚的評価が行われ,動物においては痒み様反応の掻き動作を指標にその評価が行われている。しかしながら,これら評価法は心理的要因などにより痒みの程度が個体ごとに異なっており,これら評価法を用いた鎮痒薬候補化合物の評価は非常に難しいことが問題となっている。したがって,客観的に痒みや鎮痒薬の効果の評価ができるバイオマーカーの探索が重要となっている。そこで,本研究では,そのバイオマーカーの候補因子の探索を目的として行っている。昨年度は,アトピー性皮膚炎や乾燥性皮膚そう痒症のマウスモデルで血清中副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)の濃度が健常マウスより低下し,タクロリムスやアゼラスチンの投与により痒み反応の抑制に加え、血清中ACTHが健常レベルまで回復することを見出した。本年度は,難治性のそう痒性疾患の1つの胆汁うっ滞のそう痒マウスモデルの作出を行い,成功した。現在,血清の解析(ACTHの測定)を行っている。同時に,蚊アレルギー性マウスの血清の解析(ACTHの測定)も行っている。また,ACTHだけでなく他のタンパク成分の解析を2次元電気泳動―TOF-MSシステムを用いて現在解析を行っている。さらに,様々な痒みのマウスモデルの痒みにプロテイナーゼ活性化受容体2(PAR2)が関与していることを見出してきた。PAR2の活性に伴い受容体のN末端のペプチド鎖が産生される。つまり,PAR2が活性化されればN末端のペプチド鎖の増加に繋がると考えられる。そこで,PAR2のN末端ペプチドを認識する抗体を作製した。今後,この抗体を用いて様々な痒みモデルマウスの血清での解析を行う。 また,アトピー性皮膚炎のマウスモデルの血清中にT細胞由来のグランザイムAが増加することを見出した。これもバイオマーカーとなる可能性があり,他のマウスの血清での増加を調べている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究目的は,鎮痒薬の客観的評価に有用なバイオマーカーの探索である。これまでに,アトピー性皮膚炎や乾燥性皮膚そう痒症のマウスモデルを用いて,副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)がバイオマーカーの可能性を見出した。本年度は,更に,難治性そう痒性疾患の一つである胆汁うっ滞のマウスモデルの作出に成功し,その血清ACTHの評価を現在行ってること,また,蚊アレルギーのマウスの血清の評価も行っている。更に,多くのそう痒性疾患にプロテイナーゼ活性化受容体2(PAR2)受容体が関与していることを見出し,PAR2が活性化する時に受容体のN末端ペプチドが切り出されることに着目し,その特異的抗体の作成を行ったこと。今後,この抗体を用いて解析する予定である。更に,アトピー性皮膚炎の痒みにT細胞由来のグランザイムAが関与していることや血清中にグランザイムAの濃度が増加することを見出したことから,バイオマーカーになる可能性がある。 さらに現在,2次元電気泳動―TOF-MSシステムを用いた血清成分分析を行っている。 以上のことから,鎮痒薬の客観的評価に有用な様々なバイオマーカーの候補を着実に見出していることから研究は順調に進んでいると評価できると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度は,アトピー性皮膚炎,乾燥性皮膚そう痒症,胆汁うっ滞のマウスモデルや蚊アレルギーなどのマウスモデルの痒み反応と鎮痒薬の効果の変動に対応した血清中因子の探索を2次元電気泳動―TOF-MSシステムを駆使して更に進め,病態毎或いは痒み一般に共通な鎮痒薬の客観的評価に有用なバイオマーカーの候補を提示する。 また,皮膚科医や内科医の協力のもと,ヒトへのバイオマーカーの有用性を検証する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度は,痒みの評価に有用な病態マウスモデル(胆汁うっ滞)の作出に時間を要したこと,解析に必要な量の血清の確保と解析条件の検討に時間を要したため,本年度使用予定だった研究費の残りを次年度にも使用することになった。 次年度研究費は,病態動物モデル用の実験動物,バイオマーカー変動を判定するために処置する鎮痒候補薬,ACTHやコルチゾール測定に関する検査費,PAR2受容体関連ペプチド,グランザイムなどの検出に必要な試薬類,その他新規バイオマーカー探索に必要な2次元電気泳動やTOF-MSに関する試薬に使用する。更に,成果報告のための雑誌への投稿掲載料ならびに学会報告のための旅費に使用する。
|