2011 Fiscal Year Research-status Report
生きているが培養できない菌(VBNC)の検出法開発と食品衛生に及ぼす影響
Project/Area Number |
23659334
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Research Institution | Fukushima Medical University |
Principal Investigator |
錫谷 達夫 福島県立医科大学, 医学部, 教授 (40196895)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鳥羽 衛 福島県立医科大学, 医学部, 助手 (20443864)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 食品衛生 |
Research Abstract |
本研究の目的は食中毒原因菌が「生きているが培養できない状態(Viable but not culturable; VBNC)」になるか否かを明らかにし、そのような状態になった菌の検査法を開発することによって食中毒を防ぐことである。本年度は大腸菌と腸炎ビブリオ菌について検討を行った。 増殖期にある大腸菌を滅菌水で洗浄後、滅菌水中、4℃あるいは20℃で放置し、菌数の計測を継時的に行った。その結果、4℃ではおよそ150日、20℃ではおよそ200日で普通寒天培地で培養できる菌は消滅した。ところが、この菌を液体培地で培養したところ、300日経っても菌が培養できることが明らかとなった。つまり、これまでの多くの研究は寒天培地上でコロニーを形成しなくなった菌を培養できない菌としているが、こう定義するには寒天培地での菌の検出感度が低すぎることが明らかとなった。この結果を基に、来年度は液体培地でも培養できなくなった菌をマウスや孵化鶏卵に摂取して「生きているか否か」を調べると共に、一般に食品衛生検査に使用されている培地の培養感度を明らかにする。 同様の研究を腸炎ビブリオ菌で行ったところ、この菌ではわずか3日で寒天培地上でコロニーを形成しなくなった。大腸菌での結果を参考に、今後、この菌の感度の良い培養法を検索する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
この1年で、国際的に進められている「培養できないが生きている菌(VBNC)」の常識、つまり寒天培地上でコロニーを作れなくなった菌をVBNCとして取り扱う基準が生物学として適当ではないことを明らかに出来、残り2年の研究の方向性を決定できたことは大きな成果である。また、液体培地でも培養できない状態にするには300日もの菌の保存が必要となる。こういった処置を施した菌液を準備できたことも、2年目の研究の進展には大きな収穫となった。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は食品衛生検査の妥当性を大腸菌を用いて検証する。つまり、寒天培地では菌はすぐに培養できない状態になったように見えることが判明したことを受け、食品衛生法を始め、様々な国で食品衛生のために基準検査として指定している検査法の培養感度を解析する。 また、液体培地でも培養できなくなった真のを孵化鶏卵やマウスの腸内で培養できる状態に戻す方法の確立を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
消耗品費として60万円、情報の収集並びに成果の発表のための学会出席にかかる旅費として20万円を計上する。
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